SIG-LAW SIG Law
法の理解に関する専門部会

大学等高等教育機関が備えておくべき障害学生支援に関連する法的根拠、特に障害者差別解消法に関する知識・理解、障害学生支援の際に気を付けるべき諸点を記すことにする。他のSIGメンバーや、全国の障害学生支援関係者のコメントを受けて、障害学生支援と法に関するスタンダードを公表する。

現在のメンバー

  • PHED 川島聡
    川島聡 Satoshi KAWASHIMA

    岡山理科大学経営学部経営学科准教授 新潟大学大学院現代社会文化研究科修了(2005年)。博士(法学)。東京大学大学院経済学研究科特任研究員、ハーバード・ロースクール客員研究員、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを経て現職。内閣府障がい者制度改革推進会議(障害者政策委員会)差別禁止部会構成員(2010年-2012年)。公益財団法人人権教育啓発推進センター特別研究員(2013年-)。日本学生支援機構「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集作成協力者会議協力者(2016年-)。主な研究分野は、国際人権法、障害法。

  • PHED 関哉直人
    関哉直人 Naoto SEKIYA

    弁護士五百蔵洋一法律事務所 名古屋大学法学部法律学科修了(2000年)、弁護士(2001年-)、全国手をつなぐ育成会連合会権利擁護センター運営委員(2014年-)、第二東京弁護士会高齢者・障がい者総合支援センター運営委員会副委員長(2015年-)、内閣府障害者差別解消支援地域協議会の設置等の推進に向けた検討会委員(2016年)、内閣府障害者差別解消支援地域協議会地域フォーラム・アドバイザー(2016年-2017年)、東京都障害者差別解消支援地域協議会委員(2016年-)、障害者への理解促進及び差別解消のための条例制定に係る検討部会委員(2017年-2018年)、東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会委員(2018年-)、日弁連障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会部会長(2018年-)。

  • PHED 大胡田誠
    大胡田誠 Makoto OGODA

    弁護士・国家資格キャリアコンサルタント。おおごだ法律事務所代表 日弁連障がいのある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会委員(2009年-) 社会福祉法人日本盲人会連合青年協議会会長(2014年-2018年)、同会評議員(20 18年-)公益社団法人東京都盲人福祉協会理事(2014年-2018年)、同会監事(2018年-) 公益社団法人NEXTVISION理事(2017年-)公益社団法人日本盲導犬協会評議員(2018年-) 東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会委員(2018年-)。

法の理解に関するQI(Quality Indicator)

  • QI:LAW-1教職員は、不当な差別的取扱いとは何かを正確に理解する必要がある。

    • QI:LAW-1-1教職員は、不当な差別的取扱いとは何かを正確に理解する必要がある。

      意図:教職員は、障害者差別解消法の下で不当な差別的取扱いをすることを禁止されているからである。不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害学生を障害のない学生より不利に扱うことである。正当な理由は、正当な目的に照らしてやむを得ないと言える場合に認められる。正当な理由の有無に関する判断は、一面的・主観的・抽象的にではなく総合的・客観的・具体的になされる必要がある。大学側は、正当な理由がある場合には、その理由を障害学生と保護者に説明し、理解を得るよう努めなければならない。内閣府のQ&Aによれば、不当な差別的取扱いにいうところの「『不当な』とは、当該取扱いに正当な理由がある場合には、本法により禁止される不当な差別的取扱いには該当しないという趣旨である」。また、政府の基本方針によれば、「正当な理由に相当するのは、……取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。……正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」。

    よくある間違い

    • 教職員は、障害学生との対話をせずに、独自の判断で「学生のため」という観点から配慮を提供すべきではない。

    • 教職員は、一般的・抽象的に「安全のため」という観点から、学生の求める配慮を否定すべきではない。

    • 教職員は、一般的・抽象的に、学生の求める配慮が入学・教育・卒業等の本質部分を変更すると判断してはならず、ディプロマ・カリキュラム・アドミッションの各ポリシーを具体的・継続的に見直していく必要がある(→SIG-TSとの関連)。

    • 教職員は、合理的配慮の提供プロセスにおいて、学生のプライバシーを侵害したり、ハラスメントが生じたりしないように注意をする必要がある。

    • 教職員は、保護者とのみ対話をして、障害学生とは対話をせず、その学生の意向を尊重しない、という事態を招いてはならない。

    • 教職員は、学部・学科・教員の判断を優先することにより、法律の求める義務に違反しないように注意をする必要がある。

    • 教職員は、友人関係の中で私的な配慮が障害学生に提供されている場合に、それを(機能している限りにおいて)尊重しつつも、法律の求める大学の義務が免除されるわけではないことに注意する必要がある。

    • 教職員は、就職先等への配慮情報の引き継ぎなど、大学の本来業務に付随するか否かが明確ではないと思われる場合であっても、障害学生本人の意向を最大限に尊重しつつ、就職先での効果的な配慮に対して無関心であるべきではない(→SIG-ETとの関連)。

    • 教職員は、ある配慮が過重負担を課したり本来業務に付随しなかったりしても、なんら配慮を提供せずに終わるのではなく、障害学生本人の意向を最大限に尊重しつつ、他の非過重な配慮の可能性を探ったり(→SIG-Accessとの関連)、地域資源との連携を探ったりする必要がある(→SIG-CSWとの関連)。

    • 教職員は、障害学生支援のルール作りと体制整備を進める必要があるが、仮にそれが未整備の段階であっても、それを理由に合理的配慮等の支援を断ってはならない。

  • QI:LAW-2教職員は、合理的配慮とは何かを正確に理解する必要がある。

    • QI:LAW-2-1教職員は、合理的配慮とは何かを正確に理解する必要がある。

      意図:教職員は、障害者差別解消法の下で合理的配慮を提供しなければならないからである。合理的配慮の不提供は差別にあたる。国公立大学は、合理的配慮を法的義務として提供しなければならないが、私立大学は努力義務となっている。ただし、東京都障害者差別解消条例のように条例によっては私立大学も法的義務を負う場合があり、また、今後は改正障害者差別解消法の施行により私立大学も法的義務を負うことになるので注意が必要となる。ここでいう合理的配慮とは、大学が、(1)障害学生個人のニーズが現実に存在する場合に、(2)過重負担のない範囲で、(3)社会的障壁を実際に除去することを意味する。さらに詳しく言うと、そのような合理的配慮は、(4)障害学生の意向を最大限に尊重しつつ、(5)他の学生との機会平等を実現するものでなければならない。また、合理的配慮は、(6)大学の本来の業務に付随する範囲で提供されるものであり、(7)授業やサービス等の本質を変更するものではない。以上の7つの要素を有する配慮を「合理的配慮」と呼ぶ。なお、過重負担等の判断は、一面的・主観的・抽象的にではなく総合的・客観的・具体的になされる必要がある。大学側は、過重負担等がある場合には、その理由を障害学生と保護者に説明し、理解を得るよう努めなければならない。政府の基本方針は以下のような定める。「合理的配慮は、……障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである」。「合理的配慮は、行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある」。「過重な負担については、行政機関等及び事業者において、個別の事案ごとに、以下の要素等(事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況——引用者による)を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」。

    よくある間違い

    • 準備中

  • QI:LAW-3教職員は、ひとつの事例の中で、合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いが同時に問題となりうることを理解する必要がある。

    • QI:LAW-3-1教職員は、ひとつの事例の中で、合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いが同時に問題となりうることを理解する必要がある。

      合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いは、たとえば以下の3つの場面などにおいて同時に問題となるからである。

      第1に、教員が、合理的配慮のつもりで授業においてある障害学生のみに質問をしなかった場合、その学生が障害を理由に自分には質問がなされず不利益を受けたと思うのであれば、不当な差別的取扱いの問題が生じうる。この場合、教員が、障害学生の意向を尊重・確認しないで、独自の判断で配慮をしたことが問題となる。

      第2に、教員が、障害を理由にバスケットボールの授業の履修をある障害学生に認めなかった場合、障害を理由とする不当な差別的取扱いが生じたか否かという問題とともに、バスケットボールの授業を受けるために必要な合理的配慮がその学生に提供されたか否かの問題も生じうる。仮に過重な負担があって合理的配慮が提供できず、やむを得ず、バスケットボールの授業の履修が不可能になるということであれば、その負担の過重性は履修を認めないことの正当な理由にもなりうる。

      第3に、大学の学外研修への参加は公共交通機関に限るというルールは、表面上は、障害を理由に障害者を排除するルールではなく中立的なものであるが、実際には、一部の障害者にとって特に大きな不利益をもたらしうる。この場合、間接差別が問題となりうる。このような間接差別はそれ自体法律上は不当な差別的取扱いとして明確に禁止されていないため、合理的配慮の提供可能性を考える必要がある。なお、当該ルールに障害者を排除する意図が隠されていた場合は、不当な差別的取扱い(直接差別)を問題にすることができる。

    よくある間違い

    • 準備中

  • QI:LAW-4教職員は、高等教育分野でのバリアフリーの手法として、事前的改善措置(環境の整備)と合理的配慮の二つがあることを認識し、実践する必要がある。

    • QI:LAW-4-1教職員は、高等教育分野でのバリアフリーの手法として、事前的改善措置(環境の整備)と合理的配慮の二つがあることを認識し、実践する必要がある。

      意図:障害者差別解消法はバリアフリー(障壁除去)義務として事前的改善措置と合理的配慮を定めており、これらの二つを組み合わせることにより、障害学生の直面するバリアがよりよく除去されうるからである。

      合理的配慮は、教職員が、ある特定の障害学生個人の具体的なバリアの存在を実際に認識した後に、そのバリアを除去するために、その学生との建設的対話を通して提供されるものである。基本的に、教職員と学生の間には情報の非共有性があることが多いので、その場合に、当該学生個人からバリアの除去を求める意思の表明がなされた後に、教職員は建設的対話を行うことになる。以上の意味において、合理的配慮の決定プロセスは個別的・事後的・対話的性格を有する。さらに、しばしば合理的配慮の決定プロセスは継続的性格を持ちうる。すなわち、大学が一旦合理的配慮を提供した後、継続的な関わりの中で配慮内容の見直しが必要な場合もあるので、いわゆるモニタリングと継続的な建設的対話が必要となる。

      これに対して、事前的改善措置は、不特定多数の障害学生(集団)のために、特定の障害学生個人からの意思の表明を待たずあらかじめ(事前に)バリアを除去しておくものである。この意味において、事前的改善措置は集団的・事前的性格を有するのであり、特定の障害学生個人との対話を通して講じられるものではない。ただし、事前的改善措置は、関係のある複数の障害学生や障害者団体との対話を経て講じられる必要がある。事前的改善措置は、差別解消法5条において努力義務として定められている。

      合理的配慮と事前的改善措置とは無関係ではない。ある特定障害者のために提供された合理的配慮(例、スロープ、エレベーターの設置など)が、結果的に、不特定多数の障害者のための事前的改善措置になっていることがある。また、事前的改善措置(例、スロープ、エレベーターの設置など)をすることにより、その後、特定の場合において合理的配慮がなされやすくなったり不要になったりすることがある。

      政府の基本方針は次のように記す。「法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要である。(改行)障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要である」。

    よくある間違い

    • 準備中

  • QI:LAW-0教職員は、高等教育分野でのバリアフリーの手法として、事前的改善措置(環境の整備)と合理的配慮の二つがあることを認識し、実践する必要がある。

    • QI:LAW-0-0教職員は、高等教育分野でのバリアフリーの手法として、事前的改善措置(環境の整備)と合理的配慮の二つがあることを認識し、実践する必要がある。

      意図:障害者差別解消法はバリアフリー(障壁除去)義務として事前的改善措置と合理的配慮を定めており、これらの二つを組み合わせることにより、障害学生の直面するバリアがよりよく除去されうるからである。

       合理的配慮は、教職員が、ある特定の障害学生個人の具体的なバリアの存在を実際に認識した後に、そのバリアを除去するために、その学生との建設的対話を通して提供されるものである。基本的に、教職員と学生の間には情報の非共有性があることが多いので、その場合に、当該学生個人からバリアの除去を求める意思の表明がなされた後に、教職員は建設的対話を行うことになる。以上の意味において、合理的配慮の決定プロセスは個別的・事後的・対話的性格を有する。さらに、しばしば合理的配慮の決定プロセスは継続的性格を持ちうる。すなわち、大学が一旦合理的配慮を提供した後、継続的な関わりの中で配慮内容の見直しが必要な場合もあるので、いわゆるモニタリングと継続的な建設的対話が必要となる。

       これに対して、事前的改善措置は、不特定多数の障害学生(集団)のために、特定の障害学生個人からの意思の表明を待たずあらかじめ(事前に)バリアを除去しておくものである。この意味において、事前的改善措置は集団的・事前的性格を有するのであり、特定の障害学生個人との対話を通して講じられるものではない。ただし、事前的改善措置は、関係のある複数の障害学生や障害者団体との対話を経て講じられる必要がある。事前的改善措置は、差別解消法5条において努力義務として定められている。

       合理的配慮と事前的改善措置とは無関係ではない。ある特定障害者のために提供された合理的配慮(例、スロープ、エレベーターの設置など)が、結果的に、不特定多数の障害者のための事前的改善措置になっていることがある。また、事前的改善措置(例、スロープ、エレベーターの設置など)をすることにより、その後、特定の場合において合理的配慮がなされやすくなったり不要になったりすることがある。

       政府の基本方針は次のように記す。「法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要である。(改行)障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要である」。

    よくある間違い

    • 準備中

  • QI:LAW-5教職員は、「紛争」の継続化・全面化を防止し、「紛争」のモードから「建設的対話」のモードに切り替えるようにして、学生の意向を尊重しつつ、相互理解を図る必要がある。

    • QI:LAW-5-1教職員は、「紛争」の継続化・全面化を防止し、「紛争」のモードから「建設的対話」のモードに切り替えるようにして、学生の意向を尊重しつつ、相互理解を図る必要がある。

      「紛争」の継続化・全面化(対立した状況で、要求と拒絶のプロセスが長期間継続し、話合いの場が「紛争」一色に染まること)は、障害学生の機会平等にとって望ましい事態ではないからであり、建設的対話によってこそ両者が納得した上で合理的配慮が円滑・効果的に提供されうるからである。

       「紛争」とは、大学等と学生が、双方の欲求が同時に充足されていない状況(対立した状況)で、自己の欲求の実現に向け、相互に要求と拒絶を行なっているプロセスを意味する(紛争概念については六本佳平『法社会学』(有斐閣、1986年)参照)。たとえば車椅子を利用する学生が、授業の開始終了時間に毎回職員に携帯スロープを渡すことを要求した場合に、大学が過重負担(たとえば深刻な職員不足)を理由にその要求を受け入れなかったとき(つまり対立した状況で)、もしも大学と学生が、このことをめぐり相互に要求と拒絶を繰り返しているのであれば、そのプロセスを「紛争」という。

       これに対して、「建設的対話」とは、学生の抱える困難を解決するため、大学等と学生が互いに協調しているプロセスをいう。たとえば先ほどの事例では、大学が、新たな案としてスロープを常設するという代替案を示し、学生がその代替案を受け入れる、という協調のプロセスが「建設的対話」である。ここでは、大学と学生が、双方の意向と事情を考慮に入れ、相互理解を深めつつ、学生の困難の解決に向けて協力し合っている。

       大学等と学生との対話のプロセスでは「紛争」の側面と「建設的対話」の側面が混在することがある。一時的・局所的な「紛争」が発生するのは、ある意味では仕方がないのかもしれないが、障害学生の機会平等の確保にとって「紛争」の継続化・全面化は望ましくなく、それを防止する必要があり、もし発生したら迅速に解決する必要がある。そのためには、紛争のモードから建設的対話のモードに切り替えることが求められる。そして「紛争」の防止・解決にあたる場合には、障害学生が平等に教育を受ける機会を妨げる各種の社会的障壁を除去しなければならず、社会的障壁の問題性を強調する視点(障害の社会モデル)に依拠することが基本的に重要となる。

    よくある間違い

    • 準備中

  • QI:LAW-6教職員は、障害学生支援に関する学内規程を作成・公表・周知し、「紛争」解決等の体制を整備し、それらを必要に応じて見直す必要がある。

    • QI:LAW-6-1教職員は、障害学生支援に関する学内規程を作成・公表・周知し、「紛争」解決等の体制を整備し、それらを必要に応じて見直す必要がある。

      意図:教職員は障害者差別解消法上の義務を遵守しなければならないからであり、また障害学生支援のルール化とその公表・周知は、「紛争」の継続化・全面化の防止と建設的対話の促進とに資するからであり、もって差別解消にとって有益であるからである。

      国立大学では、障害者差別解消法に関する対応要領の策定は法的義務とされている。文部科学省「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」二次まとめは、「全ての国立の大学や高等専門学校においては、障害者差別解消法に基づき、平成27年度までに国等職員対応要領が策定・公表されている。これらの要領の作成・公表は公立大学等においても努力義務となっており、私立大学等においても、公的な性格を持つ教育機関という位置づけに鑑み、国立大学等と同様の対応が望まれる。また、これらの職員対応要領は所属の職員が遵守すべき服務規律の一環として定められるものであるが、これに限らず、障害のある学生への支援についての姿勢・方針、関連する様々なルールの作成・公表が望まれる」と記す。

      また、二次まとめは、「障害のある学生が、大学等から不当な差別的取扱いを受けていると考えた場合、また合理的配慮を含む障害のある学生への支援の内容やその決定過程に対して不服がある場合に備え、大学等は、本人からの不服申立てを受理し、紛争解決のための調整を行う学内組織を整備することが望ましい」と記した上で、「その際に留意すべき観点」として、「障害のある学生への支援を行う部署や委員会等に対して、中立的な立場で調停ができる組織とすること。これらの委員会には障害者が参加していることが望ましい」点と、「大学等は、学内の紛争解決のための学内組織の存在に加えて、こうした権利保障に関する学外の相談窓口の存在を、障害のある学生に周知し、必要に応じて連携を図ることが重要である」点を挙げる。 

      大学等は、障害学生支援を実施し、その規程や体制を整備し、紛争を解決する際に、必要に応じて、文部科学省や厚生労働省などの関係機関、各都道府県市町村の関係機関(たとえば東京都障害者差別解消条例の場合は広域支援相談員)に相談したり、全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD-JAPAN)やDO-ITJapan、日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)、全国障害学生支援センター、ACE企業アクセシビリティ・コンソーシアム、関西障害学生支援担当者懇談会などにコミットしたりすることも有益である。

    よくある間違い

    • 準備中

関連資料

SIG-LAWが担当した専門的研修CBI

  • 19年4月25日 『障害のある学生に対する差別とは何か』

    障害者差別解消法の下で、障害のある学生に対する差別は禁止されていますが、差別の概念をめぐっては正確な理解が関係者の間で必ずしも定着しているとはいえない状況です。そのため、このウェビナーでは、差別の概念に立ち戻り、それを可能な限り明らかにしたいと思います。具体的には、不当な差別的取扱いと合理的配慮の不提供という二つの差別の概念がどのようなものかを明確にし、いくつかの例を挙げて両者の関係を明らかにしま…

参加大学等高等教育機関の教職員であれば、録画視聴が可能です。

申し込みをすると、CBI研修の録画を限定期間で視聴できます。複数名で視聴される際は、お一人ずつお申込みください。

歴代のメンバー

  • PHED 川島聡
    川島聡 Satoshi KAWASHIMA

    岡山理科大学経営学部経営学科准教授 新潟大学大学院現代社会文化研究科修了(2005年)。博士(法学)。東京大学大学院経済学研究科特任研究員、ハーバード・ロースクール客員研究員、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを経て現職。内閣府障がい者制度改革推進会議(障害者政策委員会)差別禁止部会構成員(2010年-2012年)。公益財団法人人権教育啓発推進センター特別研究員(2013年-)。日本学生支援機構「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集作成協力者会議協力者(2016年-)。主な研究分野は、国際人権法、障害法。

  • PHED 関哉直人
    関哉直人 Naoto SEKIYA

    弁護士五百蔵洋一法律事務所 名古屋大学法学部法律学科修了(2000年)、弁護士(2001年-)、全国手をつなぐ育成会連合会権利擁護センター運営委員(2014年-)、第二東京弁護士会高齢者・障がい者総合支援センター運営委員会副委員長(2015年-)、内閣府障害者差別解消支援地域協議会の設置等の推進に向けた検討会委員(2016年)、内閣府障害者差別解消支援地域協議会地域フォーラム・アドバイザー(2016年-2017年)、東京都障害者差別解消支援地域協議会委員(2016年-)、障害者への理解促進及び差別解消のための条例制定に係る検討部会委員(2017年-2018年)、東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会委員(2018年-)、日弁連障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会部会長(2018年-)。

  • PHED 大胡田誠
    大胡田誠 Makoto OGODA

    弁護士・国家資格キャリアコンサルタント。おおごだ法律事務所代表 日弁連障がいのある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会委員(2009年-) 社会福祉法人日本盲人会連合青年協議会会長(2014年-2018年)、同会評議員(20 18年-)公益社団法人東京都盲人福祉協会理事(2014年-2018年)、同会監事(2018年-) 公益社団法人NEXTVISION理事(2017年-)公益社団法人日本盲導犬協会評議員(2018年-) 東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会委員(2018年-)。