PHED事業について

     

障害と高等教育に関するプラットフォーム形成事業(PHED:フェッド)は2017年から東京大学が取り組んでいるプロジェクトです。将来にわたり障害のある学生への支援を支えていく組織的アプローチの土台としての大学等の連携プラットフォームを形成します。

 
  

3つの柱

PHED事業では、次の3つの柱を立てて、全国の大学・自治体・企業と連携した体制構築をすすめています。

 (1) 障害学生支援スタンダードの構築

(2) キャリア移行と就労支援

(3) 障害学生のエンパワメント

 目指しているのは、全ての大学の社会的役割として、障害学生支援の主要な機能を果たせる状況が整備されることです。すなわち、障害のある学生がどの高等機関を選んでも、その大学でできる最善の配慮・支援を受けることができ、修学し、卒後のキャリアに繋がることができるようにすることだと言えます。

3本柱の1~3で取り扱われる個別のテーマは、時代や社会的背景により変遷することが予測されます。そのため、その時代で最も活発に先進的取り組みを行う大学の知識と経験を共有できるように、固定的ではなく流動的に、その時に必要なテーマや活発な活動を展開する大学・団体・企業をネットワークに組み込れることが事業体制を実現したいと考えています。

 
  

運営体制

PHED事業の運営・連携・事務局の体制

社会で活躍する障害学生支援プラットフォーム形成事業の概要
社会で活躍する障害学生支援プラットフォーム形成事業の概要

代表校

  • 東京大学
    • 近藤武夫:准教授(先端研:バリアフリー支援室)
      近藤武夫:准教授(先端研人間支援工学分野:バリアフリー支援室)
    • 高橋桐子:准教授(先端研:バリアフリー支援室)
      高橋桐子:特任准教授
    • 松清あゆみ:准教授(先端研:バリアフリー支援室)
      松清あゆみ:特任助教
       

事業の統括・管理運営、知見の集約と構造化、各種事業の実施

連携校

  • 富山大学
    • 西村優紀美:准教授(アクセシビリティ・コミュニケーション支援室)
  • 筑波大学
    • 竹田一則:教授(障害学生支援室)

代表校の行う各種事業への連携・協力

協力機関

  • AHEAD JAPAN
    • 石川 准:代表理事(AHEAD JAPAN事務局)
  • ACE
    • 西原 靖(ACE学との連携部会)

会員校・会員企業のSIG活動への接続

  • PEPNet-Japan
    • 白澤麻弓:事務局長(PEPNet-Japan事務局)

聴覚障害学生支援の専門的知見提供

 
  

事業内容

■ 組織的ネットワーク形成

障害学生に関わる人とリソースをつなぐ目的で、専門ネットワーク(SIG:テーマ別専門部会)、地域ネットワーク、国際連携ネットワークを形成します。

■ 個別相談

障害学生支援に関する個別相談を受け付けます。大学等高等教育機関で障害学生支援に関わる教職員だけでなく、障害のある学生本人、保護者、企業、支援関係者などからも相談をお受けすることができます。電話・メールのほか、遠隔会議システムを用いたオンライン相談も可能です。

■ 「障害学生支援スタンダード」策定

SIGのメンバーを中心に検討を行います。障害学生支援に関わる重要なテーマについて、「支援の質のものさし」となる項目を策定します。その内容は、高等教育機関の障害学生支援の体制整備と適切な配慮の提供において不可欠な、専門的知識・技術・態度、またそれに係るリソースやコストについて記述されます。

   

■ 専門的研修CBI

PHEDが主催する専門的研修CBIを、シンポジウム・ワークショップ・ウェビナー形式で定期的に開催します。またそこで議論された内容などを多くの人と共有するためにコンテンツ化します。そのほか、大学や企業等でのイベント等の講師派遣・共催・後援・協力なども承ります。

■ コミュニティ活動支援

障害のある学生による勉強会・研究会・ネットワーク作りなどの企画・運営サポートを要請に応じて行います。当事者同士の結びつきとエンパワメントのためにPHED事業がお手伝いできることがあればご相談ください。。

■ 情報発信

メーリングリスト、ウェブサイトやSNS(Twitter)を通して、最新の障害学生支援関連情報を発信・共有します。要請に応じて、他機関での研修会や関連イベントについての情報掲載にも応じます。企業などでのインターンシップ情報なども発信しています。

■ ATライブラリー

事務局内にAT(Assitive Technology:支援技術)ライブラリーを備え、公開します。定期的にATライブラリーの解説ツアーや、体験会を開催します。

 
  

事業の成果

■ 国内外のネットワーク形成

●PHED事業に賛同・協力する登録制の参加校は61校(部署での登録も含む)、参加企業・参加団体は62機関に上りました。PHED事業の企画するイベントや研修にご参加いただくほか、SIG活動のパネラーとしてコメントやリクエストをいただくなど、双方向の意見交換を行いました。

(参加校・参加企業・参加団体の一覧はこちら)

●情報共有のためのメーリングリストへの登録は、合計で1,800名を超えました。また、ウェブサイト上でも情報発信を行うほか、SNS(Twitter)には多数のフォロワーが障害学生支援関連情報に関心を示してくださいました。

(詳細ページはこちら)

その他、専門ネットワーク、地域ネットワーク、国際ネットワークについては別項目で紹介します。

■ SIG活動

PHED事業の基盤となるSIGは、障害のある学生の修学やキャリアの支援においてとりわけ重要と考えられるテーマに基づいて立ち上げられ、事業終了時までに8つのSIGが構成されました。全国の大学教職員、公的機関、企業等で障害学生支援に携わっている複数の専門家・実践家が39名(大学等17校、企業・団体13機関)参加しています。各SIGは関連情報を共有し、リソースの開発や活用を通して障害学生支援の向上を図るための自主的な活動を行っています。

また事業期間中に、8つのSIGが合同で参集する「SIG-SUMMIT」を計3回開催した。SIG活動の進捗状況を報告するほか、スタンダード構築にかかわるディスカッションを行ってきました。

(SIGメンバーのページはこちら)

また、SIGの最終成果として「障害学生支援スタンダード」をまとめました。

■ 「障害学生支援スタンダード」の構築

『障害学生支援のスタンダード』 は、障害のある大学生がどの高等教育機関でも質の高い配慮・支援が受けられることを目指して、大学等において備えるべき支援体制や人材、そして障害学生支援に関わる教職員が持っているべき専門性(知識・技術・態度など)とはどのようなものなのかということを体系的にまとめたものです。私たちは、このスタンダードを高等教育機関における障害学生への適切な支援や支援体制整備の「質の指標」になるものとして、全国の先進的な取り組みを行う機関や実践家のベストプラクティス(=よい実践)を集約してきました。

担当部署だけ、担当者だけではなく、全学の教職員にも、また障害のある学生本人にもぜひ読んでいただきたいと思います。また、企業や就労支援に携わる団体・自治体の方々にも参考にしてただける内容になっています。

(詳細ページはこちら)

■ 専門的研修CBI

東大PHEDでは、障害学生支援に関わる基本となるテーマをピックアップし、大学等の教職員や支援担当者を対象とした専門的研修CBIを行っています。より専門的かつ高度な研修内容をSIGメンバーが中心となって企画し、シンポジウム、ワークショップ、またはウェビナーなど多様な形式で定期的に開催しています。

(cbiの一覧はこちら)

■ 障害学生の社会移行への取り組み

●企業・団体との連携:協力団体であるACEとともに、ACE主催のインターンシップの紹介、ACE会員企業の障害者雇用の取り組みについての紹介(IBM社によるAccess Blue Programなど)、またキャリアセミナーの運営協力などを行いました。

●就労移行やキャリア支援に関する他大学・団体主催のイベント(DO-IT Japanによる企業との2週間のインターンシップの成果報告シンポジウム、筑波大学における障害学生の就労をテーマとした学生イベント)での後援や協力を行ってきました。。

●全国9エリア(熊本・福岡・長崎・札幌・富山・東京・高知・福井・金沢)において、障害学生支援担当者と自治体福祉部門および就労支援機関とのタウンミーティング形式での情報交換会を開催しました。

(詳細はこちら)

タウンミーティング1
タウンミーティング2

■ 他機関での研修協力

PHEDでは、国内外での大学・団体等での(招待講演/FD・SD研修を含む)研修を延べ17件、イベントの共催7件・後援8件・協力17件、学会発表10件、視察(受入れ)3件、視察(訪問)3件を行いました。国内外からの要望に応えるなかで、PHED事業の取り組みや障害学生スタンダード構築について広く紹介する機会を提供することができました。

■ 国際連携・ネットワーク形成

●アジアおよび環太平洋諸国を中心とする国際的なネッとワーク形成を目的として、第1回 国際シンポジウムIDIS 2020(International Disability Inclusion Symposium on Higher Education & Career, Focus on ASEAN and Pan Pacific Countries:2020/1/25-26、於:東京大学先端研)を主催しました。日本を含むアジア・ASEAN諸国と環太平洋の8カ国から21名のスピーカー、77名の参加者によって、諸国での障害学生支援状況の情報提供や研究報告と、インクルーシブな社会の実現に向けた盛んなディスカッションが行われました。

(IDIS2020の様子はこちら)

●国際連携促進のためAUN(ASEAN University Network- Disability and Public Policy Network)の学会と視察に参加しました。また、AUNからの視察受入れや研究協力なども行いました。今後も継続的な協力関係が期待されます。

■ 個別相談

平成30年3月より、オンライン・電話・メールによる個別相談窓口を開設した(ウェブサイトに問合せフォームを設けています)。事業終了時までに総計350件を超える個別相談をお受けしています。大学入試と大学進学時の配慮に関する問合せ、大学からは社会移行(キャリア支援・就労移行)に関する問い合わせや相談の件数が経年増加する傾向にありました。

■ 学生エンパメント

● 障害学生が参加し、自己決定とセルフ・アドボカシーについて議論することが主軸の一つとなっているDO-IT Japan(東京大学先端研)と連携を図り、夏季プログラム、コンカレントセミナーなど各イベントの共催・協力を行いました。SIGのメンバーがプログラムの一部セミナーに登壇し、大学における障害学生支援担当者に対して、障害の学生として、どのように意思表明をするかなどについて、登壇社と障害学生とが相互に議論する機会を持つ連携が実現しました。

● 障害学生主催の当事者団体との情報交換を行いました。

●ATライブラリーの定期開催のうち、障害学生も参加できる日程を複数設けた。H.C.R.国際福祉機器展を障害のある学生と訪問し、自分自身の学びや生活を充実させる福祉機器を実体験する機会を持つこともありました。

●障害のある学生からの要請に応じて、勉強会や障害種別のネットワークづくりなどの企画運営のバックアップを行ってきました。いくつかの活動が学生たちの力で運営されています。

■ ウェブサイト公開・情報発信

●H30年3月にウェブサイト(http://phed/jp)を開設しました。またTwitter(https://twitter.com/PHED_U_Tokyo)は企画イベント等の広報や、知見蓄積用に運用してきました。

■ ATライブラリー

●PHED事務局内に、障害学生の学修・生活に役立つ支援機器を約100点備え、『ATライブラリー』として公開しました。定期的なATライブラリーの解説ツアー付き体験会は計24回実施、延べ390名(うち学生72名)が参加されました。そのうちの6回は全国への出張ライブラリーとして実施。各地で個別のAT活用やフィッティングの相談にも応じてきました。

●大学等からの希望に応じて短期間の試用やフィッティングのために2週間程度の貸出しにも応じてきました。ATをいくつか比較して使用みること、日常生活のなかで一定期間継続して試用してみることに大きなメリットがあったと複数の大学等からコメントをいただいています。

●ATライブラリーの情報はウェブサイトやTwitterで随時更新するとともに、ATリストを希望者に提供してきました。

 ➡(ATライブラリーのページはこちら)

●ATライブラリーに備える機器のうち、障害学生を初めて受け入れる大学等や、立上げ間もない支援担当部署・担当者向けに、当初から準備しておくとよい支援機器をまとめた『ATスタートアップキット』ができました。これはSIG-ATのメンバーにより厳選されたものであり、合理的配慮の取り掛かりや障害学生の進学促進や、高大接続・就労支援などにも役立つツールとなります。

(ATスタートアップキットはこちらから)

タウンミーティング1
タウンミーティング2

■ 運営体制の強化

● 連携校である筑波大学・富山大学は、国内でも非常に先進的な障害学生支援の取り組みを進めておられ、その蓄積された知見や技術をPHED事業にも反映していただいた。また両大学で独自に取り組まれている事業や地域ネットワーク形成ともコラボレーションし、双方に最新の情報を共有したり新たなテーマの企画運営に発展させることができました。

● AHEAD JAPAN:一般社団法人全国高等教育障害学生支援協議会との連携として、第4回大会(H30年度)、第5回大会(R1年)においてSIGを中心とした分科会企画、AT展示ブース、個別相談などをPHEDを中心に展開した。またAHEAD JAPAN主催の国際セミナーを2回、国際研究報告会1回の開催協力など、先進的な取り組みを行う大学(法人会員)や会員機関のネットワーク化に寄与した。また、平成30年度にはAHEAD JAPANが行う「重度障害学生に対する支援のあり方に関する調査研究」に参画し、成果を報告しました。 ➡(報告書はこちら)。

● ACE:企業アクセシビリティ・コンソーシアムとの連携として、障害学生の就労移行に関する情報共有を強化し、ACE定例会での教育講演、ATライブラリーの開催、ACEフォーラム参加・協力、ACE主催キャリアセミナーの開催協力などを行ってきた。また、ACE会員企業の障害者雇用の状況やインターンシップについての情報提供を全国の大学等へ発信するなど、企業と高等教育機関の接続をサポートしてきました。

● PEPNet-Japan:日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワークとの連携として、定例会議への参加、個別相談事業の相互強化、年次シンポジウムへの後援・参加を行っています。

● 京都大学HEAP(高等教育アクセシビリティプラットフォーム)とのPF連携会議を計19回行った。双方の事業運営にあたり、スタッフ派遣、機器の貸出しなど、協力体制を強化したことで発展的な活動が行われました。

 
  

今後の展開

代表校である東京大学は、補助期間終了後もその機能を大学内におき、成果の共有や情報発信などを行っていきます。また連携校である筑波大学、富山大学、協力機関であるACEは、いずれもAHEAD JAPANに会員として参加しており、引き続き連携した活動を行う予定です。本事業で構築された有機的な連携を継続発展させる上で大きな役割を果たすと考えられます。

また、SIGとして構築されたワーキンググループの機能は出来得る限り自律的な活動を継続します。事業終了以降にも、SIGを中心に組織的なネットワークの維持・拡大、関係者の有機的連携の維持が期待されています。SIGによって創出された成果の集約・普及・展開についても、AHEAD JAPANの年次大会および協議会誌等を活用して継続できるように工夫したいと思います。その第一段階として、「障害学生支援スタンダード」およびCBIやコンテンツをウェブサイトを通して共有し、多くの高等教育機関等で利用できるようにしています。

その他、アジア及び環太平洋で構築している国際連携ネットワークについては、東京大学内にもこれらネットワークを維持・拡大することを支援するセンター的機能を設けることを計画しています。例えば、留学生の支援において海外連携は不可欠であることから、アジア各国・欧米の大学関係者に対しても、障害学生支援に関する知識や経験の共有が可能な専門研修コースの設立など、日本国内外において継続的に貢献できる体制づくりが実現することが望まれます。