SIG-EP SIG Emergency Preparedness
災害等の緊急時対応に関する専門部会

大学等高等教育機関が備えておくべき災害時対策、インシデント(緊急的な事象)への対応策の中で、障害学生への対応・配慮に関する知識・技術・行動・態度等について検討し、他SIGメンバーや、全国の障害学生支援関係者のコメントを受けて、障害学生の災害・インシデント対応に関するスタンダードを公表する。

現在のメンバー

  • PHED 森脇愛子
    森脇愛子 Aiko MORIWAKI

    青山学院大学教育人間科学部心理学科准教授。博士(教育学)。公認心理師心理士、臨床発達心理士。 前職でPHED事務局スタッフとして、現在はSIG-EPのメンバーとして活動を継続しています。これまで(主に子どもの)発達障害と精神障害の研究、災害時のメンタルヘルス支援の研究に携わってきました。阪神淡路大震災の被災経験者の一人としても、大学での防災対策にはとても関心があります。障害学生を中心とした防災を考えていくことは、大学全体の意識や日常の支援体制の根幹にも大きなインパクトを与えるような気がします。

  • PHED 佐藤剛介
    佐藤剛介 Kosuke SATO

    久留米大学文学部心理学科准教授、高知大学学生総合支援センター客員准教授。8年ほど高等教育における障害学生支援部署の教員を経験し、2021年度より現職。専門は、社会心理学と臨床心理学で、特に社会生態学的観点から人間の行動や心理、精神的健康や幸福感の研究を行ってきました。近年は、障害者のハード・ソフトにおける社会的障壁や社会適応に関する定量的研究に従事しています。障害についての理解は、人間を理解することのひとつの方法だと考えています。

  • PHED 酒井春奈
    酒井春奈 Haruna SAKAI

    立命館大学障害学生支援室支援コーディネーター(社会福祉士) 修士課程(社会福祉学)修了後、2009年より熊本学園大学しょうがい学生支援室にて多様な学生の支援に携わるようになり、2014年頃から年に1回程度、障害学生やサポーター(学生)と災害時を想定したワークショップや避難訓練を開始しました。2016年4月に熊本地震を経験し、学内で被災はしませんでしたが、余震も続いたため、障害学生個別の避難対応を行うようになりました。2018年より立命館大学に移り、教職員研修や障害学生の個別避難計画を立てるワークショップを実施するなど、日常の支援の中で災害時対応にも取り組んでいます。

  • PHED 竹田周平
    竹田周平 Shuhei TAKEDA

    福井工業大学教授・博士(工学)。大学では障害学生支援を担当。専門は防災・減災分野であり、国内外で発生した災害の現地調査と分析や、医工連携による災害対策、要支援者や高齢者を対象とした避難行動の分析や臨床研究などに取り組んでいます。特に近年では、医療や福祉施設の感染症対策、ロボティクスによる高齢者や要支援者の災害時支援、またデザイン思考による実用化研究に携わっています。SIG-EPの活動により、国内の大学における防災対策が加速することを期待しております。

災害等の緊急時対応に関するQI(Quality Indicator)

  • QI:EP-1災害等緊急対応に必要不可欠な情報を得る

    • QI:EP-1-1自分の大学においてどのような災害が想定されうるかを把握する

      意図:災害は、地震災害だけではなく、気象災害(台風、寒波、暴風雪)もある。また、地震や気象災害によって生じうる二次的な災害、例えば津波、土砂災害、液状化現象などもありえる。また、火災の発生、交通障害や、生活の基本となるガス・水道・電気等インフラストラクチャーの機能が停止することも考えられる。災害の種類やダメージ規模などは、当該地域の生態環境や社会環境に大きく依存するため、まずは自分の住む地域の特徴について知っておくことが望ましい。

    • QI:EP-1-2災害発生時における学内外の適切な情報入手先とその方法を確認しておく

      意図:災害発生時には、通信回線の断絶や通信の輻輳(ふくそう)によって、固定電話や携帯電話が繋がりにくい状態になりやすい。テレビ、ラジオ、インターネット(IP電話は除く)は、伝送時間がかかったとしてもまだ比較的使用できる可能性がある。また、防災行政無線、消防救急無線、災害用伝言サービス、衛星電話・インターネットなど、自治体が所有している通信インフラもある。いくつもの情報収集手段を用意しておくことが重要である。

    • QI:EP-1-3自分の大学の災害時避難計画や防災計画、業務継続計画(BCP:BusinessContinuityPlan)を知っておく

      意図:災害発生時に、迅速かつ確実に、障害学生等を避難させるためには、災害時避難計画や防災計画について知っておく必要がある。どの区画にいる人はどこへ避難するのか、どの建物が比較的安全なのかなど必要不可欠な情報が含まれている。また、障害のない人々の避難時の動線や人数を考慮した、障害学生の避難などを考えなくてはいけない。また、大学教職員の誰が参集しなくてはいけないのか、どこに災害対策本部が設置されるのか、指揮系統はどのようになっているのか、何が優先されるのかも、障害学生等の避難だけでなく避難後の対応を考える上で重要であり、BCPについてもある程度知っておくことが望ましい。

    • QI:EP-1-4学内の防災対策組織に、障害学生支援担当者が含まれること

      意図:災害時避難計画や防災計画や安否確認方法等、災害時の様々な局面において障害者の避難が想定されているか、様々な情報や制度に対してアクセシブルになっているかを確認する必要がある。また、防災対策への提言、障害学生や障害のある教職員への情報提供も含め障害者支援の関係者が、学内の防災対策組織の一員になっていることが望ましい。

    • QI:EP-1-5防災対策や災害発生時における地域資源の利用方法や協働について考えておく

      例えば、自治体の避難行動要支援者登録制度に登録しておくと、自治体からの安否確認や避難所生活等においての支援などが受けられる可能性がわずかでも高くなる。災害発生時にこういった地域の資源や人材を使えるように準備をしておくことは不測の事態を切り抜けるためにとても重要である。

      ※避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(URL:内閣府防災情報のページ

    よくある間違い

    • 準備中

  • QI:EP-2災害発生時の障害学生の避難の準備・対応

    QI:EP-2-1大学全体で取り組む

    • QI:EP-2-1-1学内において障害学生等、災害時における避難行動要支援者(以下、要支援者)の数、生命や安全面で想定されるリスクと、必要な支援の最大値について把握する。

      意図:日常的に大学等を利用している者のうち、災害発生時に安全確保や避難、あるいはその後の避難生活において要支援者となる可能性が高い人(学生)の数と、その人たちの生命や安全面でのリスクについては予め想定を行っておくべきである。また要支援者の安全確保と避難に係る支援者(援助者)、必要な支援内容の最大値を推測したうえで対応策を検討するべきである。

    • QI:EP-2-1-2学内の避難緊急時対応のための基本的設備(防火扉・スプリンクラー・非常ベル・緊急放送システム・担架・スロープ・AEDなど)について、情報提供する。

      意図:災害対策基本法(2013年6月改正)、災害救助法などで定められた規定に基づいて設置された学内の基本的設備の情報を、要支援者本人および支援関係者などに周知する。例えば、非常ベルや緊急放送システムなどでは情報が得られない人(聴覚障害など)がいたり、防火扉によって避難経路が妨げられる可能性がある人(車いすユーザー)がおり、基本的設備に加えて緊急時には個別的な対応が必要な場合があるためである。また情報提供フィールドを作成し、大学等を利用する誰もが更新情報にアクセスできるようにしておく。

    • QI:EP-2-1-3防災計画および業務継続計画(BCP)について、必要に応じて障害学生支援担当者や障害学生に情報提供する。

      意図:BCPによって障害者の対応が異なることが想定されるため、BCPに則した障害者対応を考慮しておく。

    • QI:EP-2-1-4大学全体の防災・避難計画において、障害学生など要支援者の生命維持や安全確保の方針を定めて明示している

      意図:害学生個別の対応ではなく、障害学生一般に対する避難計画があることが望ましい。例えば、障害学生は全員、学内のこの区画に避難する、障害学生支援部署に安否確認の連絡をするなど。これにより障害学生の災害時対応の個別避難計画のコストカットができるが、個別避難計画が必要ないことを意味しない。

    • QI:EP-2-1-5普段使用している支援関連の設備・機器が使えなくなった場合を想定して、代替手段や他の選択肢について検討し、防災計画などに記述している。

      意図:災害時において普段使用している設備や支援機器が使用できなくならないようにする備え、また使用できなくなった場合の代替手段についても検討し、防災計画の中に明記する。大学全体の防災・避難計画の策定や見直しのプロセスで、積極的に、障害者などの要支援者と障害学生支援担当者からの助言やフィードバックを受けるようにする。

    • QI:EP-2-1-6非常事態を知らせるサイレンや放送案内表示等の設備において、障害学生にも対応するようアクセシビリティが担保されている。

      意図:より実行可能性の高い災害時避難計画や支援計画策定のために当事者の意見は必須である。

    • QI:EP-2-1-7防災訓練(避難訓練)を実施している。障害学生も避難訓練に参加できるようアクセシビリティが担保されている。

      意図:非常事態を知らせる設備は主にサイレンや放送など音声情報によるものが多い。聴覚障害など、音声情報の入手が困難な学生にも正確な情報が届くようにしなくてはならない。例えば、サイレンと連動した光警報機や館内放送と連動したメール配信システムなどがある。また、避難経路の指示には視覚情報が用いられることが多い。視覚障害など視覚情報の入手が困難な学生に対しても代替的な情報保障を考慮しなくてはならない。

    • QI:EP-2-1-8災害発生時における安否確認の方法がある。障害学生にも対応するようアクセシビリティが担保されている。

      意図:災害発生時において、障害学生は安全確保行動、避難すること自体や避難情報へのアクセスに困難が出てくる可能性が高い。

    • QI:EP-2-1-9個々の障害学生ごとに避難計画を策定している。※シミュレーションを行う。

      意図:災害発生時に障害学生がどこにいるかは不明なことがほとんどであり、個々の障害学生ごとに安否確認の方法が確立されていることが望ましい。その際、障害学生が確実にシステムにアクセスできることが必要である。

    • QI:EP-2-1-10障害学生などの要支援者に対する支援を行う自治体・団体等、学外との連携計画がある。

      意図:自治体によっては福祉避難所(「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」(災害対策基本法第8条第2項第15号)が対象者)の設置や、避難行動要支援者登録や要支援者名簿の作成を行う、要支援者であることをアピールするマークの作成など、自治体が持っている災害時対応の資源がある。こうしたものを利用する、または連携(例、災害時協力協定)して障害学生の災害時対応の計画、連携・協力の範囲を予め定めておくことで更なる実行可能性が上がる。

    • QI:EP-2-1-11非常時対応に特化した備蓄を確保し、かつその中に要支援者への対応が考慮されている。

      意図:災害時の避難において必要になる支援機器や備品(例、筆談ボード、非常用階段避難車、担架、簡易スロープ)の用意が必要である。

    • QI:EP-2-1-12障害学生の災害発生後の避難所生活や自宅生活を想定した訓練を実施している。

      意図:災害発生後において障害学生が避難所生活になるのか、または自宅で生活することになるのかは予測できず、特に一人暮らしや寮などに住んでいる家族の支援がない学生には生活上の困難が見込まれる。災害発生後の生活維持を考慮した計画の策定や訓練が実施されていることが望ましい

    • QI:EP-2-1-13大学が行ってきた障害学生等、要支援者への防災対策に関する経過を記録している。

      意図:防災対策は計画的・継続的に実施されるものであり、また時間を必要とする。例えば担当者の異動などによってそれまでなされてきた準備や対策が振出しに戻ることなどのないように、記録をとり、それらが共有されるようにしておく。

    • QI:EP-2-1-14大学の防災対策、災害時の対応方針、備えの状況について啓発や周知活動を行っている。

      意図:大学の防災対策組織を中心に、学内の防災に関する啓発を行うとともに、災害時の対応の方針・準備状況についての周知を行う。災害時の方針の中には、災害時の避難に関する項目のほかに、休講・休校の判断とその基準、障害学生など要支援者への対応方法など、障害学生の修学・生活に関わる内容も含まれていることが望ましい。

    QI:EP-2-2障害学生支援担当部署(者)が取り組む

    • QI:EP-2-2-1障害学生の数・状況について日常的に把握し、当該学生の所属学部や大学本部、また災害対策本部に対して必要時に情報提供できるようにしている。

      意図:災害発生時には、障害学生の安否確認、避難状況、生活状況などを迅速に把握する必要がある。障害学生支援担当では、必要時に学生の情報を防災対策組織や関係者に情報提供できるように準備が必要である。留意点として、緊急時の第三者への個人情報の提供に関しては、その範囲や内容を障害学生と事前に確認していることが望ましい。

    • QI:EP-2-2-2災害発生時、障害学生に起こる生命や安全のリスクを想定している。

      意図:災害発生時における、個々の学生における生命・安全のリスクを想定し、またスタッフ間で共有されているようにする。医療的ケアの必要な学生、情報の入手が困難な学生、移動が困難な学生など、生命や安全に直結するリスクに関する情報は、対応の優先度や緊急度を判断する場合の助けになる。

    • QI:EP-2-2-3大学が策定する防災計画等に記されている、障害学生支援担当部署や担当者の役割について把握している。

      意図:障害学生支援担当部署の災害発生時の役割を明確にすることが必要である。特に兼任者の場合には、全体の避難や災害対策業務などが振り分けられている場合があり、それらによって障害学生の対応や支援が実施できない状況が発生しやすいため留意が必要である。

    • QI:EP-2-2-4大学が策定する防災計画等について、障害学生本人や障害学生支援担当者の視点から意見を述べる。

      意図:日常的に支援に関わる担当者や障害学生からの視点を踏まえて、大学全体の防災計画等に積極的にフィードバックを行うようにする。例えば、災害時に想定される障害学生のリスクや、避難に際して必要とされる情報や移動経路に関するアクセシビリティ確保の観点から意見などを伝える。

    • QI:EP-2-2-5大学が実施する防災訓練に参加し、障害学生や支援担当者の視点からニーズや課題を把握する。

      意図:大学全体の防災訓練は障害学生の安全行動や避難におけるニーズや課題が明らかになりやすい。まず、障害学生が訓練に参加できるように必要な準備を行うとともに、情報保障などの合理的配慮を手配する(特に訓練後の講評の時間など)。また、障害学生に帯同し、ビデオ等で避難の様子を撮影・記録したり、避難にかかった時間を計る。また防災訓練を機に、全学的に障害学生への支援や配慮について広報するなど、一般の教職員や周囲の学生とともに緊急時の配慮を考える機会とする。

    • QI:EP-2-2-6災害発生時に障害学生によって危険や支障となる施設・設備の把握を行い、優先度が高いところから修繕する。

      意図:日常的に利用している施設、よく通行する場所や避難経路の周辺、教室や研究室内の環境について、災害発生時に障害学生の生命と安全のリスクとなるものは順次改善が必要である。ハード面などに関しては構内のバリアフリーマップの作成・見直しに合わせて、災害時のリスクも確認しておくとよい。

    • QI:EP-2-2-7自校が、指定避難所になっているのか、またどういった災害に対応した避難所になっているのか知っている。

      意図:指定避難所※になっているかどうかで、被災した学外の人々の流入による混乱が起こる可能性があり、それにより障害学生の支援が難しくなる可能性も考えられる。また災害の種類によって避難場所は変わるため、大学がどの災害に対する避難場所になっているのか、また地域連携や役割を考慮した障害学生対応を考慮しておくことは重要である。※一時避難場所、避難所

    • QI:EP-2-2-8障害学生がキャンパスのどこを主な活動区域にしているか知っている。

      意図:災害発生時に障害学生がキャンパス内外のどこにいるか完全に把握することは難しいが、いる可能性の高い区域を予測しておくことで、その区域・建物に即した避難計画の策定が可能になる。

    • QI:EP-2-2-9障害学生がよく使用する建物が、耐震・免震・制震構造であるか知っている。

      意図:建物が、耐震、免震、制震構造かによって避難計画が変わる場合があるため、障害学生がよく利用する建物の構造を確認しておくことが望ましい。

    • QI:EP-2-2-10障害学生がよく使っている大学内建物の避難経路や手順を知っている。

      意図:一般的な避難経路を把握するとともに、障害学生がその避難経路を利用できるかどうかを確認する。例えば狭い通路や階段、多くの学生が殺到する場所では、車いすや担架を用いた避難が困難になる場合がある。

    • QI:EP-2-2-11避難行動に支援が必要な場合の、避難支援機器を準備している(例、簡易車いす、簡易担架、階段昇降機)。

      意図:階段避難(上昇・下降)が必要な建物では、支援機器の準備を行う。想定される災害によって階段の昇/降が異なるため、建物の立地や階段の状況によって選択する必要がある。また、支援機器の設置に関わる取り決めが必要な場合には担当部署との調整が必要である。また機器を使用した避難に係る人員(避難時に操作に必要な人数、機器が操作できる人、操作を教えられる人など)、避難にかかる時間、操作の手順、メンテナンスの方法などを予め確認しておくことが望ましい。障害学生支援担当部署のスタッフは全員操作できるように訓練されていることが望ましい。

    • QI:EP-2-2-12障害学生の通学経路・通学方法を知っている。

      意図:通学中の災害発生や、災害発生後の通学方法の変更や調整のために、おおよその通学経路・方法を予め確認しておく。例えば、電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合、災害前後に計画的な運休や変更がある。その場合の通学可否の判断、安全確保において必要な情報となる。

    • QI:EP-2-2-13障害学生の居住地を知っている。

      意図:障害学生の居住地域の被災状況等によって避難やその後の生活における困難度は変わるため。

    • QI:EP-2-2-14災害発生時、障害学生と個別に連絡をとる方法がある。

      意図:災害発生時において障害学生の安否確認を行う方法およびその責任の所在が明確であることが望ましい。

    • QI:EP-2-2-15車いす利用学生の車いすの仕様(重量・動力)や基本的な操作・運搬方法を知っている。

      意図:災害発生時、エレベーター等の使用ができなくなるため、人力で車いす利用者の避難支援ができるのかどうか確認しておくことが望ましい。特に電動車いすは、重量もあり、また複雑なものも少なくないので、車いすのどこを持てば運搬が可能かなどの確認も必要である。

    • QI:EP-2-2-16障害学生が必要とする医療的ケアの内容を知っている。

      意図:障害学生が必要とする医療的ケアを把握しておくことは、その後の避難生活における適応度をあげる観点からも重要である。

    • QI:EP-2-2-17電力等のインフラの復旧までにかかるおおよその時間的目安を知っている。

      意図:障害学生に限らないが、電力等インフラの復旧までにかかるおおよその時間を把握しておくことは、その後の避難生活における適応度をあげる観点からも重要である(エレベーター、水道、ガス等の一般的な復旧の目安を知っている)。

    • QI:EP-2-2-18普段使用している障害者用施設(多目的トイレ、エレベーター、自動ドア)や設備(スロープ、階段昇降機、電源)が使えなくなった場合を想定して、復旧の手続きや代替手段を準備する。

      意図:インフラの復旧までに使用できなくなる施設や機器については、復旧までにかかるおおよその時間とともに、代替手段を検討しておく。また、再稼働時の動作確認の方法なども知っておく。

    • QI:EP-2-2-19障害学生が個別に必要とする道具や機器が使えなくなった際の想定をして、代替復旧手段を準備している。

      意図:障害学生が必要とする道具や機器を災害が発生しても使えるように準備しておくことは、その後の避難生活における適応度をあげる観点からも重要である。

    • QI:EP-2-2-20障害学生と災害時の対応について話し合う機会を持っている。

      意図:障害学生自身が災害時にどう行動し、どのような支援が必要かを考える機会をもつことで、防災・減災の意識を高めることは重要である。

    • QI:EP-2-2-21障害学生と「個別の避難計画」を立てて、実践する機会がある。

      意図:障害学生が主体的に避難について計画を立て、避難時に周囲に協力を求められる環境を事前に整えておくことは重要である。また避難方法の情報共有を障害学生支援担当者はじめ、関係する部署と共有しておく。災害によって修学環境が変化することも踏まえて、平時とは異なる支援ニーズがあるか事前に検討する場を持つ。障害学生の生活再建や大学の建物の被災状況など、災害前と異なる環境になった場合、あらためて必要な支援は何か確認し、修学環境を整えていくことは重要である。

    • QI:EP-2-2-22自宅等で被災した場合に、障害学生がどこに、どのように避難する予定かを事前に把握すると共に、災害時に利用可能な障害者対応施設やサービス(福祉避難所、当事者団体)の情報を収集している。

      意図:障害学生の居住地に応じて、想定される災害の種類、避難場所、避難経路などを学生本人が把握しているかを確認する。学生が把握していない場合には、それらの情報の入手方法を教示したり、一緒に確認するなどの手立てを講じる。また生活上の支援が必要な障害学生においては、福祉避難所(複数)や、それらの情報を持ちあわせている当該障害種別の当事者団体などから情報を得られるように準備する。

    • QI:EP-2-2-23支援担当部署内での防災対策、取り組みの過程を記録している。

      意図:記録の方法は、テキストのほか、写真や動画を蓄積するなど工夫する。担当者の異動や変更によって過去の防災対策が振出しに戻ることのないように、取り組み過程が分かるように引継ぎを行う。

    QI:EP-2-3障害学生自身が取り組む

    • QI:EP-2-3-1災害発生時の自身に起こる生命や安全のリスクを想定している(場所/時間帯/天候/などの条件によっても被災状況や自身への影響は変わる)。

      意図:災害による被害規模は災害が発生する時間や場所などの条件によって異なるが、障害学生の場合ではそれらが自分自身の心身にどのような影響を及ぼすか、リスクを想定しておくことが望ましい。予測不可能な事態(例えば地震や火事など)と、ある程度予測が可能で準備できる事態(風水害、雪害など)では、対応方法も異なる。被害の大きさと自分自身への影響の大きさを考慮して、避難行動の開始や対応の判断基準を予め決めておくことも良い。

    • QI:EP-2-3-2日常的に利用する施設、自分に必要な機器や道具が使えなくなる状況を想定している。

      意図:災害発生時において自分の必要な道具や機器が使えなくなる可能性を考慮した上で、代替や変更できるものを準備しておくことが重要である。

    • QI:EP-2-3-3日常的に利用する通学経路・通学手段が使えなくなる状況を想定している。

      意図:災害発生時(あるいは災害が予測される場合)には、交通インフラへの影響も考慮する。特に、近年では台風や天候の予測によって公共交通機関が計画的な運休を行ったり、経路の変更などを行うことがある。通学に使用している交通手段が利用できなくなることや、あるいはそれによる影響(混雑など)を予め想定し、自分自身の行動や判断の基準を決めておくことも必要となる。

    • QI:EP-2-3-4災害リスクに応じた判断基準や行動計画(安全確保・避難行動)を自身で考え、周囲に予め伝えている。

      意図:災害発生時の自分自身の判断基準や行動の計画を立てる。事前に災害発生の可能性が予見される場合の判断(例えば風水害などでの自主避難のタイミング、自主休校・早退等の判断)、あるいは安全確保、避難の際の自分がとる行動計画を立て、周囲の人や関係者に伝え、共有する。特に避難等に誰かの支援を必要とするのであれば、事前に特定の協力者(災害時に同じ場にいるとは限らないが、特定しておくことで緊急時に対応してもらいやすくなる)に自身の計画について情報提供しておく。

    • QI:EP-2-3-5周囲の人々に自身の状態、必要な医療ケア、また介助・対応に関する情報を伝える準備・手段がある

      意図:災害発生時においては、必ずしも医療専門職の支援を受けられるとは限らない。自身の状態や必要な医療ケア・介助・支援に関する情報を伝える準備があることが望ましい。例えば「個別の避難計画」(紙面)や、ヘルプカード、障害者手帳などに情報を記載するなど、その場に居合わせた人に言語以外でも伝達できる手段も検討すること。

    • QI:EP-2-3-6災害発生時に必要な物を持ち出す準備している。

      意図:一般的な持ち出し物品のほかに、個別的な必需品を準備すること。例えば、障害者手帳、医療物品(薬・呼吸器・吸引器・お薬手帳)、予備電源、衛生用品、アレルギー対応の食料、簡易トイレ、移動補助のロープ・ベルト、などがある。

    • QI:EP-2-3-7災害時に備えた備蓄をしている。

      意図:水、食料、衛生、トイレ、自身の必要な医療ケア、介助、必要物品・道具の準備を行っておくことが望ましい。およそ2~3日分の物品の確保・備蓄とともに、日常的に必要となるものの内容・数量を具体的に列挙して書き記し、また身近な支援者と共有しておく。

    • QI:EP-2-3-8災害時に備えて適切な情報確保のためのツールを複数準備している。

      意図:一般的に災害発生時には、防災放送、ラジオ、テレビ、インターネットなどから情報を収集する。しかし、音声情報あるいは視覚的な情報を入手しにくい障害がある場合には、代替的な手段や適切な情報確保のためのツールを用意しておく必要がある。また、混乱状況の中で、誤った情報や不確かな情報によって不利益がないように、準備している情報ツールが適切であるかどうかも確認する。

    • QI:EP-2-3-9災害発生時や緊急事態を知らせるサイレン・放送・案内表示からの情報が得られない場合には、個別に知らせてもらうように周囲に求めておく。

      意図:サイレン・放送・案内表示など施設ハード面の改修や修繕、また情報保障というものは学内のすべての場で配置・対応していないかもしれない。また災害発生時の混乱状況の中では適切に機能していない可能性もある。その場合にも、自分自身の生命と安全を確保するために、緊急的な情報は確実に伝えてもらえるように周囲に求めておくことが必要である。

    • QI:EP-2-3-10災害発生時や緊急事態における大学の安否連絡先がわかっている。

      意図:不測の事態に対応するため、大学に限らず支援を受けられる先を把握しておくことは重要である。

    • QI:EP-2-3-11自分がよく使っている大学内建物の避難経路・手順を知っている。

      意図:建物の構造によって、また利用人数、混乱の度合い、災害発生時の時間等によって適切な避難計画が変わってくるため、障害学生自身がよく使っている大学内建物の避難経路・手順を、複数の観点で確認・想定しておくことが望ましい。

    • QI:EP-2-3-12自分がよく使っている大学内建物が耐震・免震・制震構造か知っている。

      意図:建物が、耐震、免震、制震構造かによって避難計画が変わる場合があるため、障害学生自身がよく利用する建物の構造を確認しておくことが望ましい。

    • QI:EP-2-3-13自分がよく使っている大学内施設や設備(例:エレベーター、階段昇降機、多目的トイレなど)が使えない場合の代替手段を複数考えている。

      意図:緊急避難時に助けてもらったり、代わりに道具や機器を運んでもらう場合に、それらの基本的な仕様や操作方法が説明できなくてはならない。また道具・機器の取り扱い上の留意点や禁忌事項(特に医療機器や医療行為に関して)がある場合には、それらの説明ができるようにしておく。例:車いすの場合は操作方法、空気圧のチェック方法、バッテリー充電方法、運搬方法(持ってはいけないところ)。医療機器については使用法のほかに使用範囲(使用して良い人や行為の範囲)も。

    • QI:EP-2-3-14自分に必要な道具や機器が使えない場合の代替手段や復旧までの手立てを知っている。

      意図:代替手段は複数あることが望ましい。また電気などのインフラの復旧にかかる時間、機器の修理や調整にかかる手順や連絡先、復旧までの時間などは把握しておく。

    • QI:EP-2-3-15緊急時に助けを求められる人がいる。

      意図:災害発生など緊急時において、支援や応対の責任が分散することはよく知られている。名指しで助けを求められるような他者の確保は重要である。

    • QI:EP-2-3-16大学等が実施する防災訓練や避難訓練に積極的に参加する。

      意図:災害発生時を想定して、安全確保や避難行動をシミュレーションできる貴重な機会である。自分自身の想定や避難計画の見直しとともに、教職員や周囲の人への理解啓発の機会にもなるので、毎年参加することが望ましい。

    • QI:EP-2-3-17大学や障害学生支援担当部署(者)とともに事前に災害時対応について話し合う機会を持つ。

      意図:災害発生時に起こり得るリスク、自分自身の避難等に関する考え、判断基準や行動計画を障害学生支援担当者と共有する機会を持つ。また、安否確認や避難後の連絡手段などを確認しておく。緊急時の個人情報等の取扱いについても大学や担当部署の方針を聞き、要望を伝えておく。

    • QI:EP-2-3-18大学や支援担当部署に不足している災害時の対応方法、準備などについて意見を述べたり、要望を伝える。

      意図:全学的な取り組みや、支援担当部署等で災害時の対応や準備が十分にできていない場合、障害学生の視点で意見や要望を積極的に伝える。改修や措置など予算と人員が必要なものに関しては計画的に実行してもらえるように、モニタリングする。

    • QI:EP-2-3-19通学中や課外活動中に被災した際に誰にどのような手段で連絡するか事前に決めている。

      意図:誰にどのように連絡をするか、どうすれば安全が確保できるかを事前に検討し、家族や障害学生支援担当者とも確認しておくことは重要である。

    • QI:EP-2-3-20災害発生時に連絡すべき人や場所の一覧を作成している。

      意図:大学との連絡調整、あるいは居住地周辺の避難所や支援者・介助者、保護者との連絡のために、連絡先を整理しておく。

    • QI:EP-2-3-21自宅で災害が発生した際に避難する場所とそこのバリアフリー状況を知っている。また避難方法を計画している。

      意図:状況によっては、自宅から動かない方がよい場合もあれば、指定されている避難所等を利用する必要もある。避難場所や支援してくれる組織や人を知っておくことは重要である。

    • QI:EP-2-3-22日常的に利用している地域支援サービスが利用できない場合、どのように対応するのか家族や周囲の人と相談しておく。

      意図:生活上の支援を利用している場合には、災害時の対応方法や連絡先について自治体等と予め確認をとるようにする。災害時には支援者・介助者も被災していることによって、平時と同じサービスが受けられないことも想定しておく。

    よくある間違い

    • (災害時リスクの過小評価)災害時の被害想定や、障害学生に対応する際に起こり得るリスクを小さく見積もる。

    • (当事者の意見の無視)当事者の意見を聞かないで対応方法を策定する。

    • (行動確認の不備)災害による被害の想定や、障害学生の避難行動について、机上シミュレーションだけで実際の行動確認を怠る。災害時に必要とされる機器等の所在だけを提示し、その使用方法について確認をしておかない。

    • (個別対応の必要性)障害学生の防災対応として、避難訓練への参加だけをもって良しとしない。

  • QI:EP-3災害発生時の対応(安全確保行動・避難行動・一時避難) ※緊急対策期:発災後約72時間、生命・安全を確保する時期

    QI:EP-3-1大学全体で取り組む

    • QI:EP-3-1-1被災状況や被害に関する情報が、学生との連絡責任部署や障害学生支援担当部署へ逐次伝達・共有されるようにする。

      意図:学内の被災情報などは防災対策本部などに一括集約されることになるが、それらの情報が障害学生との連絡・支援に関わる教職員にも逐次伝わるようにしておくことが望ましい。被災や被害の情報が障害学生の生命や安全、また支援を行う者(教職員や学生)の生命や安全にも関わるからである。

    • QI:EP-3-1-2障害学生支援担当部署の教職員の安否確認・被害状況の把握を行う。

      意図:学内の障害学生支援担当部署の教職員も同じく被災する。障害学生支援担当者の安否確認とともに被災・被害の状況は組織的に把握され、無理のない障害学生支援の体制を整えるようにする。

    • QI:EP-3-1-3大学の方針を早急に伝えるためのフィールドを作り、逐次情報を更新する。

      意図:全学的な対応・復旧・業務継続の方針が逐次情報として支援担当部署や学生に伝えられるようにする。例えば、台風など気象変化や風水害など、ある程度予測が可能な災害の場合には、休講や休業の連絡、あるいはその判断の時点・基準などを示していくことが望ましい。これらの情報をもとに学生や教職員の判断や行動が変化することを大学本部が認識しておくべきである。

    • QI:EP-3-1-4被災状況の把握と情報集約の一元化を図る。

      意図:構内の被災状況に関する情報が対応本部に集約されるための手段、整理の方法が確立されていることが望ましい。特に障害学生支援に関する被災状況についての情報等の集約は、誰が(=どこの部署が)、どこで、どのように把握するのか検討しておく。

    • QI:EP-3-1-5避難所となっている大学等においては、避難所運営のためのマニュアルを作成し、要支援者への対応担当者を決定する。

      意図:避難生活における障害者のニーズや安全確保、周囲の人々への理解などは円滑な避難所運営において必須である。

    QI:EP-3-2障害学生支援担当部署(者)が取り組む

    • QI:EP-3-2-1大学全体の安否確認の仕組みと連携し、障害学生の安否情報を共有する。

      意図:原則的には全学的な安否確認のプロセスによって障害学生の安否も確認される。障害学生支援担当者は、予め決めた方法で障害学生の安否情報を入手し、次に必要な手立てや行動がとれるよう準備する。

    • QI:EP-3-2-2障害学生と支援に関わる者の安全な避難のために必要な指示を行う。

      意図:安全行動や避難行動に支援が必要な障害学生がいた場合、学生本人からの発信とともに、障害学生支援担当者がリードして周囲の人に対して必要な指示を行う。

    • QI:EP-3-2-3障害学生の避難・支援に必要な人員を確保する。

      意図:やむなく1人で対応しないといけない状況を除いて、避難や支援に必要な人員は複数確保する。教職員をはじめ周囲の学生などにも声をかけて、無理なく避難の支援ができるようにする。

    • QI:EP-3-2-4大学等から提供される情報について、障害学生のアクセシビリティが担保されていることを確認する。

      意図:障害学生が情報を入手できない状況ができないように、また孤立することのないように配慮する。例えば、避難場所でのアナウンスや、物品・食品配布等の案内が障害のある人には届きにくいと言われている。避難場所などでは複数の情報媒体(音声・視覚)によって情報提供されるように情報アクセシビリティが担保されているかを確認したり、学生本人が必要とする情報にアクセスできるように対応を行う。

    • QI:EP-3-2-5大学全体の対策本部の担当者と、障害学生など要支援者の担当者、関係者の情報共有・連携を行う。

      意図:対策本部が持っている情報を障害学生やその支援者に伝え、また一方で障害学生やその支援者から必要な情報を対策本部に吸い上げてもらうために、担当者間で円滑に情報共有するための場を作る。また、学部・講座等の教職員、介助員など関係者が複数いる場合には、情報が錯綜・混乱しないよう、連絡手段や、記録の方法を決めなくてはならない。

    • QI:EP-3-2-6障害学生との継続的な連絡手段を確認する。

      意図:予め決めた方法で障害学生と連絡を取り合うことができるか確認する。必要があれば変更する。被災状況に応じて、緊急時の連絡手段・連絡先についても改めて確認する。

    • QI:EP-3-2-7支援担当部署内また関連部署との連絡体制を整える。

      意図:障害学生支援担当者も同時に被災している。必要があれば連絡担当者、障害学生支援担当者を変更したり、複数で対応できるように、体制を整え、周囲に援助を求める。

    • QI:EP-3-2-8逐次更新される被災状況の情報を障害学生等に提供する。

      意図:対策本部で集約されてる被災状況などの情報のうち、障害学生に関わる事項について情報提供する。例えば、建物や設備(エレベーターや多目的トイレ)の使用可否、通行止めや路面状況のほか、電源確保の場所、傷病手当ができる場所、静かに休める場所など避難後の情報も発信・提供できると良い。

    • QI:EP-3-2-9使用不可の施設・支援器具を把握し、代替として必要な支援器具を確認・調達する。

      意図:生命維持、安全、移動などに関わる優先的な事項から順に対応すること。

    • QI:EP-3-2-10障害学生等の生命維持・権利擁護の観点から、対応や支援の優先事項を判断する。そして障害学生本人の意思確認の上で、対応策を講じる。

      意図:生命や安全に関わる事柄、移動・食事など生活上で配慮や支援が必要な事柄に関しては、優先して対応が必要となる。また権利擁護の観点で差別や二次的な被災・被害が起こらないように対応が講じられる必要がある。例えば、トイレ、着替え、休息スペース、食品・物品の配給など、避難後には様々なトラブルやバリアが生じる可能性がある。それらへの適切な対応のために、障害学生が連絡相談できるようにし、本人の意思確認を行ったうえで、対応策を検討・実施するようにする。

    QI:EP-3-3障害学生自身が取り組む

    • QI:EP-3-3-1自分自身の生命や安全を確保する行動、また必要な支援を求める。

      意図:自助努力はいかなる時も必要である。

    • QI:EP-3-3-2周囲の被災状況について正しい情報を得る。更新される情報を逐次受け取ることができる方法を確認する。

      意図:速やかに、また確かな情報を得るために、信頼できる情報源からの情報を逐次受け取ることができるようにしておく。音声情報や視覚情報など受け取ることができない手段であれば、別の方法で情報を受け取ることができるように周囲に伝える。

    • QI:EP-3-3-3必要に応じて、自身の障害の状態・必要な支援について説明する。

      意図:避難場所などで支援や対応を求める場合には、自分自身の障害の状態についても説明が必要となる場面がある。誰に、どのような内容を伝えるかはよく吟味し、またそれらの個人的な情報がどのように取り扱われるかも合わせて説明してもよい。

    • QI:EP-3-3-4避難に支援が必要な場合には、予め計画している避難方法に従い(あるいはその場の状況に応じて選択して)実行する。

      意図:個別の避難計画」を立てている場合には活用する。ただし、その手段が状況に合わない場合にはその場での判断で、別の避難方法を選択することもある。自分で判断して周囲に伝えることと、周囲からの情報や助言を受けて、合意してから実行する。

    • QI:EP-3-3-5一時的な避難場所では、自身が安全な場所を確保する。

      意図:一時避難場所では、多くの人で混み合うこともある。また地震のときには余震や二次災害などのリスクもある。安全で安心できる場所を確保できるように、自分自身で働きかける。「移動が少ないところがよい」「落ち着けるスペースがほしい」など、周囲の人に求めてよい。

    • QI:EP-3-3-6避難場所の状況や設備について把握する。

      意図:災害発生時には、一時避難場所であっても数時間滞在しなくてはならいこともある。その避難場所にいる人数、設備(トイレの位置、救護室)の状況、支援してくれる人の有無、情報提供の手段などについて把握しておくことが望ましい。そしてそれらの情報をもとに、数時間の滞在に向けて備えを行う。

    • QI:EP-3-3-7安否情報について、予め決められた部署・担当者に、予め決めた方法で連絡する。

      意図:大学で決められた方法、あるいは障害学生支援担当者と予め決めた方法で、安否の連絡を行う。

    • QI:EP-3-3-8生命や安全に関わる医療ケア、生活介助、その他の支援について、優先事項を判断して障害学生支援担当者や関係者と共有する。

      意図:自身の生命や安全に関わる事項、症状や被災の程度などをもとに、自分にとって必要な支援や対応の優先順位を考える。遠慮することなく、障害学生支援担当者や関係者に連絡・相談・共有する。

    • QI:EP-3-3-9提供される情報へのアクセス方法を確保し、自分で必要な時に必要な情報が得られる方法に変更してもらえるように伝える。

      意図:災害発生時や避難所等では、情報のアクセシビリティが確保されないことがある。自分で必要な情報をいつでも受け取ることができるように、伝達方法を変更・調整してもらえるように伝える。あるいは自分で情報を確保できる代替手段を確保する。

    • QI:EP-3-3-10使用不可の施設・支援器具を把握し、代替として必要な支援器具を確認・調達する。

      意図:日常的に使用している施設(トイレ・着替えなどのスペース)、支援器具(食事など生活に関わる道具、情報端末、コミュケーションツールなど)の破損や、使用の可否を把握する。代替できる物の調達を行うが、すぐに準備できない場合には、周囲の人に連絡・相談する。

    よくある間違い

    • (画一的な対応)個々の障害学生の状況を勘案せずに、障害があることを理由に画一的な対応や配慮をする。

    • (後回し・たらい回し)個別の配慮や対応のための人手が足りない、あるいは丁寧な対応が必要ということを理由に、すぐに対応に着手しない。あるいは適切な担当者につなげない。

  • QI:EP-4災害発生後や中長期の避難生活、通常生活への復旧・回復

    QI:EP-4-1大学全体で取り組む

    • QI:EP-4-1-1大学の業務・授業の再開に向けて、通学のアクセシビリティについて確認する。

      意図:交通インフラの復旧状況によって、通学路の変更や通学時間の延長を考慮する。通学路や構内で通行できない場所や危険箇所がないか情報収集する。可能であれば、授業の再開前にシミュレーションする。

    • QI:EP-4-1-2大学の業務・授業の再開に向けて、学内のアクセシビリティ(施設設備などのハード面)について確認する。被災し使用できない場合には代替手段を準備する。

      意図:構内の建物・施設・設備などの復旧状況について確認する。エレベーター、エスカレーター、多目的トイレ、更衣室、そのほか障害学生が日常的に使用する設備等が使用できない場合には、教室移動や代替的な手段の検討など、調整や調達に時間がかかることを想定しておく。公共交通機関の復旧状況によって、通学路の変更や通学時間が延長を余儀なくされる場合がある。また通れない場所や、危険な場所がないか、通学路の状況について情報を収集する。

    QI:EP-4-2障害学生支援担当部署が取り組む

    • QI:EP-4-2-1障害学生の生活状況・環境の変化を把握する。

      意図:電話・メールなどでの連絡だけではなく、できる限り、学生の住まいを訪問し、インフラの復旧の状況、衣食住の確保ができているか、二次災害の危険性がないかを目視して確認することが望ましい。また災害後も環境・生活状況は常に変わるので、定期的に連絡を取り、状況を把握する。そのほか介助や地域支援サービスを利用している学生については、サービス提供の復旧状況を確認し、必要があれば地域と連携して必要な生活介助や支援を確保する。

    • QI:EP-4-2-2障害学生が自身の状況や、心配事などを話しやすいように配慮する。

      意図:平時に比べて災害や環境変化の影響を受けている。また支援者もまた被災していること、復旧や復興に忙しくしているという理由で、連絡や相談を控える学生がいるかもしれない。気軽に話せる雰囲気づくり、安心して話せる場所の確保(避難所等でも相談内容や個人情報が守られる空間を作るなど)を意識して配慮すべきである。また、支援者自身も落ち着いて学生の話を聞くことができるように体制を整える。

    • QI:EP-4-2-3障害学生が二次的な被災、または災害後の犯罪や事故の被害に遭わないように予防するとともに、緊急時の対応ができるようにする

      意図:障害者は二次的な被災や、犯罪や事故に遭う危険度が高いと言われている。そのため当事者の不安感が高まることも予想される。定期的な巡回や、連絡等を通じて、障害学生からの相談に応じたり、必要があれば具体的な対策(警察への接続も含む)を行うこと、また身近な犯罪や事故の発生状況、防犯上のノウハウ等の安全確保に必要な情報の提供に努める。

    • QI:EP-4-2-4障害学生支援担当者の負荷を考慮して、支援体制を組織的に組む。

      意図:障害学生支援担当者も同時に被災者である。心身の負荷を考慮して、無理のない支援体制整備を組織的に検討する。支援担当部署だけではなく、援助が必要な場合には全学的に取り組むようにする。

    • QI:EP-4-2-5避難生活が中長期化する可能性を踏まえて、安全で安心できる生活環境を整えるために、学生本人と相談を行う。

      意図:避難生活が中長期化する可能性が出てきた場合には、学生本人、大学(障害学生支援担当者や関係者)、保護者と相談して、対応を検討する。 障害学生の支援の必要性と生活状況によっては、地域避難所(福祉避難所等)への接続を手助けする必要が出てくることもある。生活介助等が必要な場合、独りで生活することが心配な場合などは、地域の避難所や支援サービスの利用なども考えられる。また、生活環境の変化に伴って修学に影響を及ぼす場合(一次的に休学しなくてはならない場合)の対応については学内で検討が必要である。

    • QI:EP-4-2-6授業等の再開に向けて、学内の支援体制を再構築する。

      意図:災害によって、これまでなかった支援ニーズが新たに発生したり、従来の支援が提供できなくなる場合もある。また障害学生支援担当者に別の役割や業務が発生することもあり、学内の障害学生支援体制を見直し、再構築する必要が出てくる。災害時には一時的に大学等を超えた支援リソースを活用することもできる(例えば、遠隔情報保障を行う他大学や企業など)。障害学生支援担当者も被災によって負荷がかかることも考慮して、自校だけで解決するというよりは、近隣あるいは全国の支援ネットワークの中で恒常的な支援体制を考えることが望ましい。

    • QI:EP-4-2-7被災による間接的な影響に配慮し、障害学生に適切な情報提供を行う。

      意図:被災による心身の直接的な影響以外にも、環境や生活の変化による身体的不調やストレス、経済的なダメージ、メンタルヘルスの不調などは、災害発生直後よりも少し時間が経ってからその影響が表面化してくることもある。例えば被災によって生活が苦しくなったり、アルバイトなどの経済活動ができなくなったり、費用負担が増えたりすることもある。また避難生活の長期化によって栄養不足・運動不足による身体への影響、フラッシュバック、アニバーサリー反応などメンタル面に不調をきたす場合などがある。災害を理由とした経済的支援(授業料免除など)の情報、心身の不調に対する相談窓口の紹介など、関連する情報の提供ができるように準備があることが望ましい。

    • QI:EP-4-2-8災害やその影響により、障害学生の学修機会が損なわれないよう、学修機会の保障の観点から必要な支援・配慮を行う。

      意図:被災した障害学生においては、さまざまな理由により、通学や授業への参加、課外活動への参加が制約されることが起こりやすい。学修機会を保障し、そのための支援・配慮は復旧・復興の時期にも継続して行われるべきである。

    QI:EP-4-3障害学生自身が取り組む

    • QI:EP-4-3-1環境の変化に応じて、自身の状態の変化を明確に伝える(環境の変化、動揺やストレスで症状が悪化することもあることを知っておく)。

      意図:被災による直接的な影響以外にも、避難生活や環境の変化によって修学や生活に間接的に影響を及ぼすことは多くある。障害・症状の状況や心身の状態はどうか自分自身でモニタリングするとともに、変化(悪化)していることがあれば、周囲の人や障害学生支援担当者に伝えるようにする。

    • QI:EP-4-3-2被災後に新たに必要になった支援・合理的配慮があれば、申し出る。あるいは変更や調整を申し出る。

      意図:災害発生後にはこれまで不要だった配慮や支援が必要となる場合がある。あるいは災害発生前に行っていた支援・配慮の内容や方法を変更したり調整しなおさなくてはならないこともある。その場合には従来どおり、大学の規定・プロセスに基づいて合理的配慮の申し出を行う。

    • QI:EP-4-3-3災害後の生活(あるいは避難生活)等で必要な支援を見直し、地域福祉サービスなどの再調整を行う。そのために、地域福祉に関する情報を入手し、支援人員の確保や連絡方法の確認を行う。

      意図:災害後の生活上の支援・介護等に関しては、地域福祉サービスの利用が可能か早急に確認する必要がある。ただし、地域の被災状況によって従来と同じサービスが受けられなくなっていたり、あるいはヘルパーなどの人員確保や調整が困難になることもある。自分自身でニーズを伝えて調整を行うことが望ましいが、独力では調整できない場合、あるいは負荷が大きい場合には地域の相談窓口(あるいは大学の障害学生支援担当者)に援助を依頼してよい。

    • QI:EP-4-3-4手助けが必要な場合には、積極的に援助を要請する。

      意図:災害時には、平時とは異なる環境、またその環境や状況は変化しやすい。想定していること以上のことが起こることもある。その場合には、遠慮したり、反対に何でも自分だけで行動したり問題解決してしまおうとせずに、周囲の人へ援助や支援を要請してよい。その際、自分に必要なこと(必要ないこと)が周囲に伝わるように、自分の意志と言葉で表現できるようにしておくこと。

    • QI:EP-4-3-5被災による間接的・長期的な影響について、必要があれば相談したり、支援情報を得る。

      意図:災害は、心身や生活にも間接的に影響することがある。例えば自分自身の被害そのものは少なくても、周囲や関係者が被災することによって従来通りの支援が受けられなくなったりすることもある。また、しばらく時間が経ってからそうした影響が表面化することもある。例えば、避難生活が長く続くことによって受けるストレスや、栄養不足・運動不足などによる体調の悪化、フラッシュバックや気分の変調(主に抑うつ的な気分になるなど)が起こるなど、メンタル面に影響が出ることもある。そういった場合には、自分自身だけで我慢したり解決しようと思わず、正しい情報を得たり、相談や支援を申し出てよい。

    よくある間違い

    • (合理的配慮の不提供)平常時とは異なる状況下であることを理由に、あるいは「みんなも大変な想いをしているのだから」と障害学生にとって必要な配慮の提供を拒否したり、申し出に対応しようとしない。

    • (参加・活動の制限)被害や混乱が落ち着いていないこと、あるいは安全が確保できていないことを理由に、障害学生の通学や修学を一律に認めない。状況に応じた配慮や対応を講じず、参加や活動を阻む。

    • (間接的影響の考慮)直接的な災害の被害に遭っていないからといって、その影響を過小評価して障害学生の変化の把握を行わない、支援体制を通常通りに稼働させる等という安易な判断を行う。

    • (大学の責任のもとでの支援)障害学生の避難生活や、状況に合わせた学修支援を、一部署や、担当者の責任として任せ、大学全体での支援や協力体制を敷かない。

    • (個別性の軽視)すべての障害学生に対して、医療的ケア、生活支援、心理的援助の必要があると決めつけない。学生個人のニーズを確かめようとしない。

    • (抱え込み)一部署や担当者だけで抱え込んで全て対応しようとしたり、必要な情報提供を行わなかったり、必要なサービスに接続させない。

関連資料

SIG-EPが担当した専門的研修CBI

  • 19年2月13日 『災害発生“前”における大学と障害学生の準備』

    授業や試験などにおける合理的配慮だけでなく、災害発生時、交通機関の不具合、事故や人災などのインシデントといった不測の事態への障害学生対応をどのように行うかについては、高等教育機関の間でもかなり温度差があるように思います。そこで本セミナーでは、まずもって災害に注目し、災害発生時に必要な対応を概観した上で、どういった準備が必要かを考えます。大学の体制、支援室の立ち位置、担当者や学生の経験などに応じて、…
  • 19年8月27日 『避難行動シミュレーション』

    大学等高等教育機関には、障害のある学生や教職員がいます。もし、いま地震や火災が発生し、緊急避難が必要となったら、すぐに対応できるでしょうか。津波に備えて一刻もはやく逃げなくてはならない、エレベーターが動かなくなった、瓦礫の中で誘導が必要だ・・・・そんな「避難行動」のシミュレーションを通して、大学等での障害学生支援の取り組み、私たちが日ごろから何をどのように想定し準備しておくべきかを考えます。 こ…

参加大学等高等教育機関の教職員であれば、録画視聴が可能です。

申し込みをすると、CBI研修の録画を限定期間で視聴できます。複数名で視聴される際は、お一人ずつお申込みください。

歴代のメンバー

  • PHED 森脇愛子
    森脇愛子 Aiko MORIWAKI

    青山学院大学教育人間科学部心理学科准教授。博士(教育学)。公認心理師心理士、臨床発達心理士。 前職でPHED事務局スタッフとして、現在はSIG-EPのメンバーとして活動を継続しています。これまで(主に子どもの)発達障害と精神障害の研究、災害時のメンタルヘルス支援の研究に携わってきました。阪神淡路大震災の被災経験者の一人としても、大学での防災対策にはとても関心があります。障害学生を中心とした防災を考えていくことは、大学全体の意識や日常の支援体制の根幹にも大きなインパクトを与えるような気がします。

  • PHED 佐藤剛介
    佐藤剛介 Kosuke SATO

    久留米大学文学部心理学科准教授、高知大学学生総合支援センター客員准教授。8年ほど高等教育における障害学生支援部署の教員を経験し、2021年度より現職。専門は、社会心理学と臨床心理学で、特に社会生態学的観点から人間の行動や心理、精神的健康や幸福感の研究を行ってきました。近年は、障害者のハード・ソフトにおける社会的障壁や社会適応に関する定量的研究に従事しています。障害についての理解は、人間を理解することのひとつの方法だと考えています。

  • PHED 酒井春奈
    酒井春奈 Haruna SAKAI

    立命館大学障害学生支援室支援コーディネーター(社会福祉士) 修士課程(社会福祉学)修了後、2009年より熊本学園大学しょうがい学生支援室にて多様な学生の支援に携わるようになり、2014年頃から年に1回程度、障害学生やサポーター(学生)と災害時を想定したワークショップや避難訓練を開始しました。2016年4月に熊本地震を経験し、学内で被災はしませんでしたが、余震も続いたため、障害学生個別の避難対応を行うようになりました。2018年より立命館大学に移り、教職員研修や障害学生の個別避難計画を立てるワークショップを実施するなど、日常の支援の中で災害時対応にも取り組んでいます。