STANDARD 3 アクセシビリティ保障の理解

3-1 基本的なアクセスの保障

障害のない学生が一般的な方法でアクセスできる修学に関わる学内外の全ての情報、施設・設備、その他の人的・物理的環境(オンラインを含む)について、障害のある学生が同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案することができる。

  • 3-1-1障害のない学生が一般的な方法でアクセスでき、 大学等が学生に対して提供する全ての教育やサービスにおいて、 障害のある学生のアクセシビリティを検討することができる

    [意図]

    学生のアクセスは大学等が学生に対して提供する全ての教育やサービス(本来業務)に付随するあらゆる場面(例:学籍、授業、試験・評価、研究活動、大学行事、移動・生活、教育・学生支援・キャリア支援サービス、課外活動など)において検討すべきものであり、授業や試験等の特定の場面のみに固執するべきではないことを理解しておくことが障害学生支援担当者に求められるため。

  • 3-1-2アクセスを保障するための複数の方法について、学生のニーズ、障害特性の考慮、アクセスを保障しうる品質や安全の確保、コストおよび大学等に係る負担の程度を勘案・提示の上、複数の方法を提案できる

    [意図]

    アクセスを保障するための複数の支援方法(例:テキストデータ化・ノートテイク・PC通訳・手話通訳・点訳・音声認識・遠隔通信技術の利用など)について効果やコスト等を理解することで、低コストの方法だけを提案するのではなく、アクセスを最大限に保障する方法を提案することが障害学生支援担当者に求められるため。

  • 3-1-3学生のアクセスを最大限に保障できるが既存の資源では不足する、あるいは慣行として行われていない方法がある場合に、学内外の新たな人的・金銭的・物理的資源を積極的に開拓することができる

    [意図]

    アクセスを最大限に保障する方法を実現するために、従来の資源のみによらず、積極的に学内外のリソースを開拓することが障害学生支援担当者に求められるため(例:支援の質の向上、過重な負担の軽減化への努力)。

よくある間違い

  • 力のある情報保障担当者がいるので安心して任せる。
  • 他の部署の協力を得られそうにないので、支援室のスタッフのみで何とかする。
  • 障害種別に応じた対応マニュアルを作成し、マニュアル通りの支援を適用する。

3-2 相談·サービス·制度へのアクセスの保障

個々の障害特性に応じた意思表明手段により、障害のある学生が学内外の関係者との相談・サービス・制度にアクセスし、想定される全ての支援の選択肢から障害のある学生が自己決定する機会を保障することができる

  • 3-2-1大学等における障害のある学生と他者との関わりについて、学生の障害特性に応じた適切な意思表明手段(オンラインを含む)と機会を保障できる

    [意図]

    学生本人が自己決定する機会を保障するために、対面での口話のみによらず、あらゆるコミュニケーション手段(例:点字、拡大文字、筆談、手話、メール、チャット、電話、相談しやすい窓口の設置等)とその機会の保障が障害学生支援担当者に求められるため。

  • 3-2-2大学等において障害のある学生に関係する相談・サービス・制度に対して容易にアクセスできるように、相談・サービス・制度に関する十分な情報の保障を行うことができる

    [意図]

    合理的配慮や修学上の相談等について、障害のある学生が大学内のどこに、どのように相談するべきかを明瞭にすることは、障害のある学生が建設的対話に参加するための前提条件であるため(例:障害学生支援に関するWEBサイト・学生案内等の充実、オープンキャンパスにおけるアクセスの保障)。

  • 3-2-3障害のある学生が大学等との建設的対話にアクセスできるように、本人が理解して決定できるまで対話を維持・進展(見直しを含む)することができる

    [意図]

    障害のある学生本人が理解して決定できるように、大学等から可能な選択肢を提示し続けることで、対話を継続・発展を支援することが障害学生支援担当者に求められるため。

よくある間違い

  • 研修会等で専門家が効果的と示した方法を、学生に確認することなく採用する。
  • 学生が最初に希望した支援内容を4年間変わらず採用する。
  • 学生から意思の表明がない場合は、社会的障壁の除去について必要性が想定されたとしても何も行わない。

3-3 施設·設備·情報システムへのアクセスの保障

障害のない学生が一般的な方法でアクセスできる全ての修学に関わる学内外の施設・設備・情報システムについて、障害のある学生が同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案することができる

  • 3-3-1学内の施設・設備について、安全かつ円滑な移動に関わる物理的環境について、障害のある学生の意見を考慮した整備計画を立案し、設置・改修することができる

    [意図]

    障害のある学生が学内を安全かつ円滑に移動するためには、物理的環境に関するアクセシビリティの向上が必要となるため(例:利用者に適した点字ブロックの敷設、容易に操作できるドア、アクセシブルエントランスの表示、視覚過敏にやさしい壁面塗装、障害のある学生が参画するバリアフリーマップの整備等)。

  • 3-3-2学内の施設・設備について、障害のない学生に提示されている全ての情報を、障害のある学生も同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案できる

    [意図]

    障害のある学生が学内の施設・設備を利用するためには、障害のある学生に適した入力方法での情報提供が必要となるため(例:点字、拡大、触地図、音声案内、視覚的な見通しの効く環境、カラフルすぎない情報提示等)。

  • 3-3-3学内の情報システムについて、障害のある学生も障害のない学生と同様にアクセスできることを最大限に保障するために、ウェブアクセシビリティを考慮に入れた情報システムの運用に関する提案をすることができる

    [意図]

    障害のある学生は施設・設備等の物理的側面のみならず、学習管理システム(LearningManagementSystem)やWEB会議システム等へのアクセスが不可欠となるため(例:音声読み上げソフトやキーボードによる操作に対応したシステムの選択、各システムにおけるアクセシビリティ機能の把握および障害学生や関係教職員への周知等)。

  • 3-3-4学内の施設・設備・情報システムの利用ルールについて、学生の障害の程度に起因して一般的な利用ルールの変更が必要な場合に柔軟に対応することができる

    [意図]

    障害のある学生のニーズによっては、時に既存のルールの適用がふさわしくない場合があり、必要に応じたルール変更が求められるため。

よくある間違い

  • JIS X 8341: 3に準拠するだけでは配慮している感じが出ないので、オーバーレイを採用する。
  • 施設・設備・情報システムを十分に完備していれば、学生への状況確認を行う必要はないと考える。
  • 学生同士の助け合いの精神を育むので、物理的障壁も時には役に立つと考える。

3-4 授業へのアクセスの保障

障害のない学生が一般的な方法でアクセスできる全ての修学に関わる学内外の施設・設備・情報システムについて、障害のある学生が同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案することができる

  • 3-4-1授業について、障害のない学生が利用できる全ての情報を、障害のある学生も同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案できる

    [意図]

    障害のある学生が授業にアクセスできるためには、障害のある学生に適した入力方法での情報提供が必要となるため(例:教科書・教材・板書・スライド・映像資料・音声での説明等は視覚情報ならびに音声情報とテキストデータを提示する、授業時間外にも学習できるようにデータ提供、撮影、録音、録画を認める等)。

  • 3-4-2演習・実験・実習授業について、障害のない学生が利用できる全ての機会を、障害のある学生も同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案できる

    [意図]

    障害を理由として決めつけることなく、本人の意志を考慮しながら、授業での学習機会を保障することが必要となるため(例:グループワーク・プレゼンテーション・体験学習に適切に参加できる機会を保障する等)。

  • 3-4-3オンラインで行われる授業について、オンライン授業特有の要因を考慮して、障害のない学生と同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案できる

    [意図]

    オンライン授業は対面授業と実施方法が異なるため、情報保障を含む支援方法の変更やオンライン授業で使用するシステムの機能を適切に利用することが必要となるため(例:リアルタイム授業における遠隔文字通訳の利用、口話が難しい場合のチャット機能利用、オンデマンド授業動画への適切な字幕付与、対人不安のある学生の映像オフの許可等)。

  • 3-4-4授業について、学生の障害の程度に起因して、一般的な参加方法が困難な場合に本質的変更がない範囲で柔軟に対応することができる

    [意図]

    学生の障害の程度によっては、一般的なアクセス方法では十分ではなく、必要に応じたルール変更が求められるため(例:聴覚障害学生へのリスニング免除、対人コミュニケーションに障害のある場合においてグループワーク以外の方法での学習機会の提供、移動に困難のある学生等で対面授業の受講が困難な場合にオンライン受講の許可等)。

よくある間違い

  • 安全上のリスクを考慮して、実験や実習は免除する。
  • 移動等に介助が必要という理由のみを勘案し、オンライン参加に代替することを提案する。
  • 学外実習に参加する場合は、実習先の合理的配慮提供義務に基づくため、大学は介入しない。

3-5 研究活動へのアクセスの保障

障害のない学生が一般的な方法でアクセスできる全ての修学に関わる学内外の施設・設備・情報システムについて、障害のある学生が同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案することができる

  • 3-5-1研究活動について、障害のない学生が利用できる全ての情報を、障害のある学生も同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案できる

    [意図]

    障害のある学生が研究活動にアクセスできるためには、障害のある学生に適した入力方法での情報提供が必要となるため(例:研究論文・書籍・図書館所蔵資料等はテキストデータでも提供等)。

  • 3-5-2研究活動について、障害のない学生が利用できる全ての機会を、障害のある学生も同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案できる

    [意図]

    障害を理由として決めつけることなく、本人の意志を考慮しながら、研究活動の機会を保障することが必要となるため(例:身体的な機能制約により遂行が難しい研究活動にパーソナルアシスタントを配置する、学会等の研究発表時に専門用語を理解できる情報保障者や代読者の配置、精神障害等を理由とした個別発表・遠隔発表の許可等)。

  • 3-5-3研究活動について、学生の障害の程度に起因して、一般的な参加方法が困難な場合に本質的変更がない範囲で柔軟に対応することができる

    [意図]

    学生の障害の程度によっては、一般的なアクセス方法では十分ではなく、必要に応じたルール変更が求められるため(例:対人コミュニケーションに障害のある場合においてグループワーク以外の方法での学習機会の提供)。

よくある間違い

  • 環境整備や合理的配慮の提供をせずとも遂行できる範囲の研究を提案する。
  • 危険物の取り扱いがあり、安全性を確保できないという理由で、合理的配慮の検討を行うことなく、研究室での受け入れが困難であると示す。

3-6 すべての試験への受験の保障

障害のない学生が一般的な方法でアクセスできる全ての修学に関わる学内外の施設・設備・情報システムについて、障害のある学生が同様にアクセスできることを最大限に保障する方法を提案することができる

  • 3-6-1入学試験について、障害のない学生が利用できる全ての入学試験(一般入試、推薦入試、AO入試、大学院入試、論文公開審査等で、口頭試問や実技等を含む)を、障害のある学生も同様に受験できることを最大限に保障する方法を学生の合意を得た上で提案できる

    [意図]

    現在、文部科学省の指針でも、別室受験、時間延長、点字・拡大文字・音声読み上げ機能等による出題が求められているため。

  • 3-6-2定期試験やレポート等の成績評価にかかわる各種試験について、障害に起因する理由により一般的な参加が困難な場合に、学生との合意の上、本質的変更がない範囲で柔軟な対応を提案することができる

    [意図]

    学生の障害によっては、成績評価にかかわる各種試験で一般的な方法では参加できない場合があり、授業担当者と障害のある学生がその評価方法について、いずれも理解し、肯定していることが必要となるため。

  • 3-6-3成績評価やクラス分け等に活用される外部試験について、障害に起因する理由により一般的な参加が困難な場合に、学生と合意の上、本質的変更がない範囲で柔軟な対応を提案することができる

    [意図]

    学生の障害によっては、外部試験においても参加が困難な場合があるため。

  • 3-6-4その他、授業内等に実施されるリアクションペーパー等について、障害に起因する理由により一般的な参加が困難な場合に、学生と合意の上、本質的変更がない範囲で柔軟な対応を提案することができる

    [意図]

    学生の障害によっては、授業内等に実施されるリアクションペーパー等へのアクセスが困難な場合もあるため。

よくある間違い

  • 障害のある学生への配慮として、他の学生と異なる評価基準を適用する。
  • 試験時間が定められているので、他の学生と公平性を保つためという理由で、時間延長を認めない。

関連資料