STANDARD 1 法と権利保障の理解

by SIG-LAW

1-1 教職員が不当な差別的取扱いとは何かを正確に理解しているか。

意図

教職員は、障害者差別解消法の下で不当な差別的取扱いをすることを禁止されているからである。

  • 1-1-1不当な差別的取扱いとは何かを正確に理解している

    不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害を理由として、障害のある学生(以下、障害学生)を障害のない学生より不利に取り扱うことをいう。

    「不当な」という文言が用いられているのは、差別的取扱いに正当な理由があれば、本法の下で禁止される不当な差別的取扱いには該当しないという趣旨による。正当な理由は、正当な目的に照らしてやむを得ないと言える場合に認められる。

    正当な理由の有無に関する判断は、一面的・主観的・抽象的にではなく総合的・客観的・具体的になされる必要がある。教職員は、正当な理由がある場合には、その理由を障害学生と保護者に説明し、理解を得るよう努めなければならない。

よくある間違い

  • 教職員が漠然とした安全上の問題を理由に障害のある学生の施設利用などを拒否するのは誤りである。
  • 本法の禁止する不当な差別的取扱いの範囲を、障害者であること(障害があること)を理由とする差別的取扱いに限定するのは誤りである。障害者のみに関連する事柄(盲導犬、車いすなど)を理由とする差別的取扱いも不当な差別的取扱いに含まれる。

1-2-1 教職員が合理的配慮とは何かを正確に理解しているか。

意図

教職員は、障害者差別解消法の下で合理的配慮を提供しなければならないからである。

  • 1-2-1合理的配慮とは何かを正確に理解している

    合理的配慮の不提供は差別にあたる。

    合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相対することによって生ずるという「障害の社会モデル」の考え方を踏まえたものである。

    合理的配慮とは

    1. 障害のある学生の個々の必要に応じ、
    2. 過重な負担を伴わず、
    3. 社会的障壁を除去し、
    4. 障害のある学生の意向を十分に尊重し、
    5. 大学等の本来の業務に付随し、
    6. 障害のある学生の機会を平等にするもので、
    7. 事柄の本質を変更しないもの

    をいう。

    過重負担等の判断は、一面的・主観的・抽象的にではなく総合的・客観的・具体的になされる必要がある。大学側は、過重負担等がある場合には、その理由を障害学生と保護者に説明し、理解を得るよう努めなければならない。

よくある間違い

  • 教職員が独自の判断のみで配慮を検討するのは誤りである。
  • 教職員が漠然とした安全上の問題を理由に配慮を否定するのは誤りである。
  • 教職員が保護者のみと対話をして、障害学生とは対話をせず、障害学生の意向を尊重しないのは誤りである。
  • 教職員が障害者差別解消法の義務よりも学部・学科の判断を優先することは誤りである。
  • 教職員が、ある配慮が過重負担を課したり本来業務に付随しなかったりした場合に、他の配慮の可能性を諦めることは誤りである。

1-3 教職員が、ひとつの事案の中で、合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いが同時に問題となる可能性があることを認識しているか。

意図

合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いは、たとえば以下の3つの場面などにおいて同時に問題となるからである。

  • 1-3-1ひとつの事案の中で、合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いが同時に問題となる可能性があることを認識しているか

    1. 教員が合理的配慮のつもりで障害学生のみに質問をしなかった場合、障害学生が障害を理由に質問してもらえず不利益を受けたと思えば、不当な差別的取扱いが生じうる。教員が障害学生の意向を尊重・確認せず独自の判断で配慮をしたことが問題となる。
    2. 教員が、障害を理由に授業の履修を障害学生に認めなかった場合、障害を理由とする不当な差別的取扱いが生じたか否かという問題とともに、授業を履修するための合理的配慮が提供されたか否かの問題も生じうる。仮に過重な負担があって教員が合理的配慮を提供できず、やむを得ずこの授業の履修を認めない場合、その過重な負担は障害を理由に授業の履修を認めないという差別的取扱いにとっての正当な理由にもなる。
    3. 学外研修への参加は公共交通機関に限るというルールは、表面上は、障害を理由に障害者を排除するルールではないが、一部の障害者にとって大きな不利益をもたらしうる。このような間接差別はそれ自体法律上は不当な差別的取扱いとして明確に禁止されていないため、合理的配慮の提供可能性を考える必要がある。なお、当該ルールに障害者を排除する意図が隠されていた場合は、不当な差別的取扱い(直接差別)が問題になりうる。

よくある間違い

  • ひとつの事例の中では、合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いのどちらか一方のみが問題となる、という理解は誤りである。
  • 障害学生に合理的配慮を提供したことを理由として、その障害学生に不利な取扱いをすること(成績評価を下げることなど)ができる、と考えるのは誤りである。

1-4 教職員が、高等教育分野でのバリアフリーの手法として、事前的改善措置(環境の整備)と合理的配慮があることを認識しているか。

意図

障害者差別解消法はバリアフリー(障壁除去)義務として事前的改善措置と合理的配慮を定めており、これらの二つを組み合わせることにより、障害学生の直面するバリアがよりよく除去されうるからである。

  • 1-4-1事前的改善措置と合理的配慮があることを認識しているか

    合理的配慮は、教職員が、特定の障害学生個人の具体的なバリアの存在を実際に認識した後に(一般には、その学生から意思の表明がなされた後に)、そのバリアを除去するため、その学生との建設的対話を通して提供されるものである。この意味で、合理的配慮の決定プロセスは個別的・事後的・対話的性格を有する。さらに、大学が合理的配慮を提供した後、継続的な関わりの中で配慮内容の見直しが必要な場合もあるので、モニタリングと継続的な建設的対話も必要となる。

    これに対して、事前的改善措置は、不特定の障害学生(集団)のために、特定の障害学生個人からの意思の表明を待たずあらかじめ(事前に)バリアを除去しておくものである。この意味で、事前的改善措置は集団的・事前的性格を有するのであり、特定の障害学生個人との対話を通して講じられるものではない。ただし、事前的改善措置は、関係のある複数の障害学生や障害者団体との対話を経て講じられる必要がある。事前的改善措置は障害者差別解消法5条において「環境の整備」として定められている(努力義務)。

よくある間違い

  • 合理的配慮と事前的改善措置とが無関係である、と考えるのは誤りである。
  • 障害者差別解消法の下で事前的改善措置を講じなくても良い、と考えるのは誤りである。

1-5 教職員が、紛争の継続化・全面化を防止し、紛争のモードから建設的対話のモードに切り替えることができるか。

意図

紛争の継続化・全面化(対立した状況で、要求と拒絶のプロセスが長期間継続し、話合いの場が紛争一色に染まること)は、障害学生の機会平等にとって望ましい事態ではないからであり、また、建設的対話によってこそ両当事者が相互に理解を深め納得した上で合理的配慮が円滑・効果的に提供されうるからである。

  • 1-5-1紛争のモードから建設的対話のモードに切り替えることができるか

    紛争とは、大学等と学生が、双方の欲求が同時に充足されていない状況(対立した状況)で、自己の欲求の実現に向け、相互に要求と拒絶を行なっているプロセスを意味する(紛争概念は六本佳平『法社会学』(有斐閣、1986年)参照)。障害学生が、合理的配慮を要求した場合に、大学等が過重負担を理由にその要求を受け入れず(対立した状況で)、大学等と学生が相互に要求と拒絶を繰り返すのであれば、そのプロセスを紛争という。

    これに対して、建設的対話とは、障害学生の抱える困難を解決するため、大学等と学生が互いに協調しているプロセスをいう。このプロセスでは、大学等と学生が、双方の意向と事情を考慮に入れ、相互理解を深めつつ、障害学生の困難の解決に向けて協力し合っている。

よくある間違い

  • 紛争の側面と建設的対話の側面とが混在する事例はない、と考えるのは誤りである。
  • 教職員が紛争の防止・解決に際して「障害の社会モデル」を軽視するのは誤りである。

1-6 大学等が、合理的配慮等を含む障害学生支援に関する学内規程を作成・周知し、必要に応じて見直し、紛争解決等の体制を整備しているか。

意図

教職員は、障害者差別解消法上の義務を遵守しなければならないからであり、また、障害学生支援のルール化とその周知は、紛争の継続化・全面化の防止と建設的対話の促進とに資するからである。

  • 1-6-1紛争のモードから建設的対話のモードに切り替えることができるか

    文部科学省「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」の「第二次まとめ」は、こう記す。「全ての国立の大学や高等専門学校においては、障害者差別解消法に基づき、平成27年度までに国等職員対応要領が策定・公表されている。これらの要領の作成・公表は公立大学等においても努力義務となっており、私立大学等においても、公的な性格を持つ教育機関という位置づけに鑑み、国立大学等と同様の対応が望まれる。

    また、これらの職員対応要領は所属の職員が遵守すべき服務規律の一環として定められるものであるが、これに限らず、障害のある学生への支援についての姿勢・方針、関連する様々なルールの作成・公表が望まれる」。

    そして、「第二次まとめ」は、「大学等は、本人からの不服申立てを受理し、紛争解決のための調整を行う学内組織を整備することが望ましい」と記す。

よくある間違い

  • 障害学生支援のルールや体制が未整備である段階では合理的配慮を提供しなくてよい、と考えるのは誤りである。

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