STANDARD 6 障害学生支援と修学のための要件や基準の理解
by SIG-RS
6-1 高等教育機関における、要件や基準の位置づけに関する前提と基本について理解し、関係者に説明することができる
障害学生支援において、要件や基準に対する視点がなぜ必要なのか、その前提を理解し支援実践の中で活かすことができるように日々備えておくことは、高等教育機関で障害学生支援に関係する職務を担当する者にとって必須の事項である。そのことを本項目で確認したい。
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6-1-1障害学生支援において、要件や基準と向き合う際の前提を理解し、周囲に説明することができる。
[意図]
障害学生支援に求められる機能は多々あるが、修学そのものを支える支援、すなわち、単位取得、進級、希望する研究室への配属、資格取得、学位取得を着実に進めるための支援はその中核を成している。これらを漏れなく確実に進めるためには、それらを達成するために設定されている要件や基準について十分に情報収集をし、障害のある学生が不利益を被ることがないよう丁寧に吟味し、必要な支援内容を設定していかなければならない。
日本の高等教育機関における障害学生支援の一つの指針として、平成24(2012)年12月25日に文部科学省がリリースした「障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)」では、「大学等は、学生に提供する様々な機会において、障害のある学生が障害のない学生と平等に参加できるよう、合理的配慮を行う。ただし、高等教育を提供することに鑑み、教育の本質や評価基準を変えてしまうことや他の学生に教育上多大の影響を及ぼすような教育スケジュールの変更や調整を行うことを求めるものではない。」とされており、『教育の本質や評価基準』すなわち、要件や基準を考慮することなく合理的配慮を提供することはあり得ない。
近年では特に、高等教育機関における教育の質保証の議論を通じ、単位や学位の修得要件の明確化や各種資格要件の厳格化が進められており、さまざまな要件や基準が高等教育機関の現場に導入されている。特に医療、福祉、心理、教育、そして工学分野等に関連した専門職、技術職養成に関連した学部学科においては、専門職、技術職の専門性を担保するために示されている要件や基準と、障害によって生じる修学困難さとの間に生じている溝の大きさに対処するため、欧米に倣う形で、専門職が専門職として機能するために必要な本質的に求められる要件を具体的に明示した「テクニカルスタンダード」の策定が、検討され始めている。
学生や大学院生の学修成果の水準を保障し、専門職に就こうとする者の専門性を担保するために設定されたり、設定されようとしているそれらの要件や基準は、安易に設定されたり運用されれば障害による支援ニーズのある学生にとっては、新たな欠格条項として機能してしまう負の側面もある。
障害学生支援の担当者は、「教育の本質や評価基準」を変えずに合理的配慮を提供するため、それらの要件や基準とどう向き合い、どう取り扱うか、そしていかにして差別的な適用がなされないようにするか、障害学生支援を実施するための基本的な大前提として留意し続けなければならない。
なお、日本の高等教育においてさまざまな要件や基準が存在するが、潜在的なもの(implicit conditions/standards)と明文化されたもの(explicit conditions/standards)が存在する。障害学生支援担当者は各場面において明文化された、または潜在的な要件や基準について認識し、それぞれの要件や基準に対して合理的配慮を検討する能力が求められる。
- 在的な要件や基準の例:電子メールやパソコンが使用できること、コミュニケーションが取れること、グループ活動ができること
- 明文化された要件や基準の例:入試において一定以上の評価、対面授業に2/3以上の出席
Good Practice
- 高等教育機関において設定されている要件や基準に関連して、常に情報を収集し続けると共に内容を理解し、障害のある学生が各授業(講義・演習・実験・実習等)において設定されている教育の本質を習得する機会を保障できる形で、合理的配慮を提供できるよう関係者と共に検討し実施することができる。
よくある間違い
- 障害学生支援担当者として「障害のある学生の支援ニーズにいかに対応するか?」という、厚生補導や学生支援に関連する側面ばかりに目をむけ、単位取得要件や基準といった、いわゆる教務や学務に関連する側面に目を向けず、合理的配慮を適切に提供できなくするばかりか、障害のある学生が各科目や実習において設定されている、教育の本質を習得する機会を損なうような事態を招いてしまう。
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6-1-2日本の高等教育機関において、要件や基準が明示され重要視されるようになった背景を意識し、対応することができる。
[意図]
日本の高等教育機関のあり方については、時代の推移と共にさまざまな形で議論され、デザインされ、各機関における創意工夫の中で特色ある研究や教育活動が実施されてきた。21世紀に入ると、先行きの予測が困難な複雑で変化の激しい現在の社会において、個人の充実した人生と社会の持続的発展を実現するための研究や教育を行う場としての変革が、各高等教育機関に求められるようになった。それらを具体的に進めるための施策の一つとして、文部科学省中央教育審議会大学分科会大学教育部会が平成28(2016)年3月31日「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマポリシー)、「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラムポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッションポリシー)の策定及び運用に関するガイドラインを発行すると共に、「学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)」を改正しすべての高等教育機関において、これらの三つのポリシーを一貫性のあるものとして策定し、公表するよう定めた。これらの流れを受け、「教育を通じて「学生が何を身に付けたか」という観点を重視して個々の学生の学修成果の把握・評価を行い、どのような評価の基準や方法に基づき大学として卒業を認定し、学位を授与したかについての説明責任を果たせるようにすることが求められる(同ガイドラインより)」ようになった。この流れを受け各教育機関においては、シラバス等の充実により要件や基準が明確に示されるようになり、以前に比べ評価基準等の明確化も進められるに至った。さらに、平成30(2018)年に示された「2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」ではその方向性の一つとして、「高等教育機関がその多様なミッションに基づき、学修者が「何を学び、身に付けることができるのか」を明確にし、学修の成果を学修者が実感できる教育を行っていること。このための多様で柔軟な教育研究体制が各高等教育機関に準備され、このような教育が行われていることを確認できる質の保証の在り方へ転換されていくこと」が示されている。
障害学生支援担当者は合理的配慮提供において、教育の本質に抵触しない形での提供が求められている以上、このような高等教育の変遷と学生の修学環境の変化にも常に目を向け、学生が何をどのようにどこまで習得することを本質的に求められているのかを確認し続ける点に、留意することができるよう求められている。
Good Practice
- 日本の高等教育機関全体で求められている教育機関としての機能や役割を十分に意識し、現代の社会情勢に照らし、本人のニーズにも合致した合理的配慮の提供を実行できる。
よくある間違い
- 日本の高等教育機関全体で、どのような取り組みがなされているのかを理解せず、自校での目の前の状況での対応に終始してしまい、教育の質保証の観点を見落とした対応をしてしまう。
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6-1-3要件や基準が障害のある学生にとって、新たな障壁となる側面があることについて理解し、対応することができる。
[意図]
障害の社会モデルに基づく合理的配慮の考え方が十分に理解されていなかったり、障害による支援ニーズに対してその個別具体性に対する配慮が欠けていたりすると、要件や基準が新たな欠格条項(障害等の理由で一律に資格や免許を与えないこと)のような性格を帯びる形で運用されてしまう可能性があることを十分に認識し対応すると共に、理解・啓発に取り組むことが障害学生支援担当者には求められている。なお、要件や基準は、合理的配慮の提供を受けた場合であっても、合理的配慮の提供を受けていない学生と同等のレベルでその要求水準に達していると見なしてよい、とされていることにも留意する。
Good Practice
- 要件や基準は、合理的配慮の提供を受けながらクリアすればよいことを教職員に説明し、理解を求めたり、学生と共に確認したりする。
よくある間違い
- 他に明確な理由もないのに、あらかじめ設定された要件や基準をクリアできないだろうという憶測のみを根拠として過剰に振りかざし、合理的配慮の提供を検討することなく、学生を講義や実習等から排除させてしまう。
- 要件や基準で示されている項目をクリアできない学生がいるときに、合理的配慮の提供の検討もせず専門性の担保という側面のみを重視し要件や基準を根拠として示し、拡大解釈したり、過剰に適用したりすることより学生から修学の機会を奪う。
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6-1-4要件や基準が合理的配慮提供において、肯定的な役割を果たす側面があることについて理解し、対応することができる。
[意図]
近年日本の高等教育機関においては、単位修得要件や資格要件の明確化・厳格化が進められ、さまざまな基準や評価項目が示されるようになっており、その傾向は特に資格修得を目指す学部研究科において顕著である。要件や基準が明確に示され、専門職や技術職それぞれの専門性が具体的に示されることは、障害学生支援の分野でも、学生に提供する合理的配慮によって変更・調整すべき事項と程度を検討する際に、具体的な指標として活用できるため、検討が容易となるといった肯定的な面があることにも留意する。
Good Practice
- 要件や基準を学生が目指すべき到達目標として参照し、学生と共に明確な目標を押さえつつ、合理的配慮に関する話し合いを積み重ねることによって、どのように修学していくかを確認する。
よくある間違い
- 要件や基準があることで合理的配慮を検討しやすくなる側面もあることを理解せず、「そもそもそんな基準があることが間違いなのだから無視してよい」と、専門性に疑義が生じるような対応を提案してしまったり、「そんな基準を達成することなんてできないよ」と基準等と適切に向き合わなかったりして対応する。
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6-1-5高等教育機関において、要件や基準に当たるものにどのようなものがあるか、把握することができる。
[意図]
高等教育機関において、要件や基準に当たるものとして以下に示すようなものがある。これらを網羅的に把握し障害学生支援において、どのようなタイミングで対応する必要があるか、学生と共に見通しをもつ必要がある。
よく見られる要件や基準の例
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入学前に関係するもの:オープンキャンパスや入学前相談等の機会に参照するもの
- アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー
- シラバス
- モデルコアカリキュラム
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入学手続き後授業開始時までに関係するもの
- シラバス
- 履修のしおり
- 授業の種類
- 演習・実験・実習の要件
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課外活動等に関係するもの
- 部活やサークルの参加資格・要件
- 障害のある学生の参加を妨げる要件
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授業において評価に関係するもの
- 授業参加
- レポート等の課題
- グループワーク
- フィールドワーク
- 発表およびそれらの評価方法と評価基準
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学内実習に関係するもの
- 参加要件
- 単位取得要件
- 実施要領
- 評価方法
- 実施環境・条件
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学外実習に関係するもの
- 参加要件
- 単位取得要件
- 実施要領
- 評価方法
- 実施環境・条件
- 実習先からの注意事項
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研究室配属時に関係するもの
- 研究室配属のプロセス
- 要件
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CBT OSCE 国家試験等資格取得に関係するもの
- (受験)要件
- 取得要件
- 実施要領
- 合理的配慮申請方法・条件・要件
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卒業研究・学位論文執筆に関係するもの
- 卒業研究・論文執筆の認定要件
- 実施要領
- 執筆要領
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就職活動・社会移行に関係するもの
- インターンシップ等の就職活動参加要件
- 募集要項
- エントリー要件・方法
Good Practice
- どういった要件や基準がどのタイミングで示され、達成を求められるかを十分に把握しておくことにより、学生と準備をしたり、それへ向けた変更・調整のための期間を十分に設けたりすることにより、学生が余裕をもって要件や基準を達成できるように支援することができる。
よくある間違い
- 要件や基準が学生の学年進行に合わせ、どのように設定されているかを確認せずに対応し、十分な準備期間を設けられなかったり、手遅れになったりして、学生が不利益を被ってしまう。
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6-1-6学年進行の各場面に応じ適切なタイミングで、要件や基準と絡めた合理的配慮を検討することができる。
[意図]
要件や基準を合理的配慮の提供を考える際に目安として用いるという、肯定的な側面での活用が進むように、学年進行に応じた支援を通じてその有効性を明示し続けると共に、欠格条項のような運用がなされないようにさまざまな機会をとらえて、関係者に働きかける必要がある。
Good Practice
- 学生の学年進行や卒業から就職までを見通しつつ、要件や基準を確認し学生と十分に議論したり、教職員や学内外の実習担当者と検討したりすることで合理的配慮を提供する。
よくある間違い
- 入学前から卒業後まで、要件や基準について考慮し支援すべき機会は多いにも関わらず、教職員等が指導しにくい場合にだけ、要件や基準を理由として支援しないという判断を下すことを阻止できない。
- 学内実習等では検討の余地がある場合もあるが、学外での実習等では検討の余地がなくなりがちで、要件や基準を厳格に適用しすぎたり、十分な検討をすることなく実習機関の判断に任せたりすることで、学生の修学の機会を逸することを予防しない。
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6-1-7要件や基準を考慮し支援する際には、セルフアドボカシーの観点が重要であることを認識することができる。
[意図]
学生が自ら要件や基準の内容について確認し、合理的配慮を求めるための意志表明ができるように支援することが、セルフアドボカシー強化の観点から望ましい。
Good Practice
- 学生自身が、教職員や学内外の実習担当者との建設的な対話を通じて、合理的配慮について共に考える機会を体験し、自己理解を深め、意思の表明の仕方、そして関係者への働きかけ方を学ぶことができるように促す。
- セルフアドボカシーのスキル向上を常に意識して、学生自身が関係者との調整能力を持てるように導くことができる。
よくある間違い
- セルフアドボカシーについて、意識せずに支援内容を決定してしまう。例えば、学生の意向を尊重せず大学側の思惑を押し付ける。
- 修学上の合理的配慮を検討する営みは、セルフアドボカシーのスキルを高める絶好の機会であるにも関わらず、先回りして安易に代行してしまう。
- 要件や基準を拡大解釈し、学生に過剰に適用することを求める。
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6-1-8要件や基準をすべての学生に厳格に適用することを優先するあまり、合理的配慮提供の際に必要な個別のニーズに対応する観点を見落とさないように留意し、対応することができる。
[意図]
要件や基準は拡大解釈されたり、その専門職に就いていたり、目指したりする者に対して過剰な適用を求めることにつながり、合理的配慮がなされないことがある可能性に留意する。
Good Practice
- 要件や基準の内容を理解しつつ、個別のニーズに対応した配慮内容を適切に提案し、関係者と共に合理的配慮について検討する。
よくある間違い
- 要件や基準を学生の個別のニーズや学生の意思の尊重を行うことなく、厳格に適用する。
6-2 中等教育~高等教育への移行期、オープンキャンパスや入学前相談等の機会に参照すべき要件や基準について、出願希望者や関係者と共に確認することができる
高等教育機関における障害のある学生への支援は、中等教育機関までの段階で提供される特別支援教育の枠組みとは異なる。特別支援教育では教育課程のすべての項目を確実に習得することを求めずに、各自の得意な分野で十分に力をつけ、それを生きる糧として職業生活に結び付けられるよう、教育の結果の保証も意識して合理的配慮が提供される。
しかし、高等教育機関では教育の質保証の観点から、必修の項目を省略することや、評価基準を下げるなどの調整は許されない。したがって、高等教育機関では機会の保証のための合理的配慮が提供される。この違いを入学希望者や保護者に十分な理解を求める必要があり、アドミッションポリシーとの関係、入学試験、資格要件、養成科目等の高等教育機関特有な教育のあり方と、要件や基準の理解が促進されるような支援が必要である。
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6-2-1出願前の対応において、要件や基準を入学希望者やその関係者と共に確認しながら、対応することができる。
[意図]
入学を希望する学部のアドミッションポリシーについて、入学希望者(必要により保護者や入学前に在籍する機関の進路指導担当者)と共に確認し説明する。また、入学前の支援に関する情報が共有できるならば、それをもとに合理的配慮の提供内容を効果的に検討できることを説明する。
Good Practice
- 担当した入学希望者に入学後に課せられることになる要件や基準に照らして、たとえ支援困難なニーズがあることが確認できた場合でも、自分が所属する高等教育機関を進路先として検討していることは、歓迎すべきことと受け止めて対応する。
- 入学希望者が希望する学部・研究科等が求める三つのポリシーと、学生の思いや意図を十分にくみ取りつつ、示されている要件や基準とも比較し、困難な場面も想定しつつ、客観的にフェアな判断ができるように適切な情報を提供する。
- 中等教育までの間に個別の教育支援計画などの資料が作成されているならば、高等教育機関での支援計画に置き換えて、支援内容および支援方法を検討する。
よくある間違い
- 「あなたにだけに特別なことはできない」、「前例がない」、「人手が足りない」、また、「専門職として求められる能力は、自力で発揮できるのが当たり前である」などと、要件や基準を盾に入学を暗に拒否する。
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6-2-2出願希望者が在籍する機関の進路指導担当者に、要件や基準に関し適切な情報提供を行うことができる。
[意図]
出願希望者に対してだけでなく、入学前に在籍する機関の進路指導担当者にも十分な情報を提供し、出願希望者に適切な支援がなされるよう働きかけることは大事である。
Good Practice
- 出願希望者があらゆる学部・研究科等を選択可能となるように、進学説明会等の機会を活用し、中等教育機関等の進路指導者に対して、高等教育機関における合理的配慮について情報を提供する。
- 出願希望者がより的確な進路決定が可能となるように、基準等を絡めた合理的配慮の情報を提供する。
よくある間違い
- 出願希望者が支援の有無のみを進路決定の判断材料にし、予期不安によって、本来希望する学部・研究科等への進学をあきらめさせるような進路指導をさせてしまう。
- 入学前に在籍していた機関の進路指導担当者が出願希望者へ、三つのポリシーや資格に関する要件や資格取得までのプロセスを十分に知らせずに進路選択をさせてしまい、入学後にミスマッチが生じる事態を招いてしまう。
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6-2-3高等教育機関のホームページ等で、要件や基準を絡めた支援に関する情報を発信することができる。
[意図]
出願希望者があらゆる学部・研究科等を選択できる可能性があることを前提とし、出願希望者が適切な判断をするのに十分な情報を提供する。
Good Practice
- 出願希望者が合理的配慮提供に具体的なイメージを持てるよう、適切な情報を公開する。
- 出願希望者へ単位取得や学内外の実習等、そして就職について、要件や基準を絡めた情報を提供する。
- 出願希望者が障害学生支援のサイト等において、出願前から三つのポリシーや資格取得を意識できるように記述する。
よくある間違い
- 支援の実例や体制について公開すると、充実した支援を行ってくれる高等教育機関だという認識を広く与えることに繋がり、支援ニーズのある出願希望者が他の高等教育機関と比べて過剰に集まってくるという予期不安にとらわれ、情報公開をしないという判断をする。
6-3 入学手続き~授業開始の期間、または在学中に新たな支援ニーズが生じ、合理的配慮提供をしなければならなくなった時に、参照すべき要件や基準を入学決定者と共に確認することができる
入学、科目の履修、進級、および卒業に際し、学生が意識しなければならない上述の三つのポリシーに示される要件や基準、そして資格取得要件として示される基準等を、学生との対話を通じて共に確認すると共に、合理的配慮について学生と教員等の関係者の間で建設的な対話を促し、状況に応じた合理的配慮内容の調整が求められる。
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6-3-1入学決定直後、あるいは在学中に支援ニーズが生じた際に、当該学生が卒業までに身に付けることが求められる専門性に関する要件や基準を意識し、把握することができる。
[意図]
入学を希望する学部のアドミッションポリシーについて、入学希望者(必要により保護者や入学前に在籍する機関の進路指導担当者)高等教育機関で求められる専門性および専門職養成課程における要件や基準は、ある特定の場面のみにおいて意識されるものではない。入学決定直後など合理的配慮提供の検討初期段階においても、卒業や資格取得までの過程とそれに関連する要件や基準を意識しつつ、合理的配慮について提案し、学生に見通しを持たせることが重要である。
Good Practice
- 入学決定後の早い段階で、卒業や修了までのカリキュラムおよびスケジュールを提示しつつ、学生が所属する課程において最終的に身に付けることが求められる能力等に関する要件や基準を学生と共に確認する機会を設け、カリキュラム進行を意識した合理的配慮の内容検討と調整を行う。
よくある間違い
- カリキュラム進行により浮上するバリアに対し、将来的に対応がより困難となるような「その場しのぎ」で学びの本質を変えてしまったり、持続不可能な支援を提供したりする。例えば、読み書き困難のある学生が、外国語にルビフリをすることを配慮内容とする。具体的には、外国語の正確な読みをカタカナで表記することは厳密には不可能とされているのに加え、他の学生も発音に悩んだりするのと同じように悩んでもらい、自身で工夫等を考えてもらう方が「同等の機会」に当たると考えられ、ルビを使った学修をさせると学びの深化を妨げ、教育の本質を変えてしまう恐れがある。
- 合理的配慮が何たるかを理解せず、また、要件や基準を十分に確認せずに場当たり的な不適切な対応に終始し、学生を混乱させる。例えば、当該学生との関係が良好であるということで、特定の障害学生支援担当者に依存させることや、合理的配慮の限界(制限)あるいは配慮と要件や基準との兼ね合いを考慮せずに、個別学修支援を提供することが挙げられる。
- 要件や基準をクリアさせたいがために、合理的ではない過度な配慮を提供することにより、学生が自身で工夫等を身に付け成長する機会や配慮を受けずに自身で対処する機会を奪ってしまう。
- 学生が要件や基準を踏まえた上で、主体的に、自分に必要な支援とは何かを考える機会を提供せず、意思の表明を阻害するような先回り支援を障害学生支援担当者の独断と偏見で提供する。
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6-3-2各授業科目の要件や基準を意識することができる。
[意図]
教育内容および方法、そして学修成果の評価方法や基準等を示すカリキュラムポリシーやシラバスの内容について、学生と共に確認することが合理的配慮を検討する上でも重要である。
Good Practice
- 学生の希望や意思を最大限尊重しながら、各授業(講義・演習・実験・実習等)の内容やシラバスに明示されている評価基準等に応じて必要となる合理的配慮について、具体的に検討した上で提案する。
- 学生の同意を得た上で、関係者(学外実習の場合は学外関係者も含む)との建設的対話の場を設定すると共に、学生に求められる活動内容を確認し合理的配慮を提供するために、関係者にも要件や基準を意識するよう促しつつ、具体的な調整を行う。
よくある間違い
- カリキュラムポリシーおよびディプロマポリシー、そしてシラバス等に示される評価基準等を意識・参照せずに支援内容を決定する。
- 提供される授業の必要不可欠な要素や到達目標等を確認することなく、合理的配慮内容を決定する。
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6-3-3資格取得を目指すにあたって、要件や基準を意識することができる。
[意図]
卒業に関連して資格取得を目指す学部・研究科等では、資格取得要件として示される要件や基準について、早い段階で学生と共に確認することにより適切な合理的配慮の検討が可能となる。
Good Practice
- 資格取得を目指す上で要件や基準において、バリアとなり得る項目があったとしても資格取得を断念させず、学生の希望や意思を最大限尊重しながら合理的配慮について内容を提案し、その実現に向けて関係者と調整を行う。
- 資格取得後に当該資格を持って就業する場合に備え、就業に際し必要となる合理的配慮について、学生自身が事前に見通しが持てるように支援し、学内外の関係支援機関等も紹介する。
よくある間違い
- 合理的配慮の提供の可否を検討せず、要件や基準を理由に関連科目の履修を断念させようとする、あるいは安易に退学や転部転科を含む進路変更を促す。
- なるべく早い段階から要件や基準を意識することが効果的であるにも関わらず、確認を怠り当該資格関連の要件や基準を考慮した合理的配慮を提供しない。
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6-3-4抽象的な要件や基準が示された場合にも、具体的な対応を行うことができる。
[意図]
三つのポリシーやシラバス等には、抽象的な表現が多くみられるが、合理的配慮を検討しやすくするために、要件や基準に示されている項目を例示するなどの手段により、学生がイメージしやすくすることが重要である。
Good Practice
- シラバスや三つのポリシーを含む、単位の修得要件等が抽象的で具体性に乏しい場合には、関係する教職員や資格認定機関等に働きかけ、表現の明確化を図りつつ具体的に合理的配慮が検討できるようにする。
- シラバスや三つのポリシーにおいて、不当な差別的取り扱いにつながる内容、あるいは不適切な表現や内容が含まれていないか、または今後付け加えられることがないか、ということを常に確認を行い、抽象的な表現ではなく具体的な基準や行動レベルが想起できる内容になるよう各関係者・関係機関に働きかける。
よくある間違い
- 「学生がコミュニケーション能力を適切に発揮できるよう配慮する」など、抽象的な表現を用いた合理的配慮内容を提案・決定する。
- 抽象的な表現の用いられた要件や基準の具体的な意味を確認せずに、合理的配慮の検討をしようとする。
6-4 学生生活(課外活動、サークル・部活動、寮生活等)に関連した要件や基準を確認しつつ、参加を保障することができる
障害のある学生が充実した学生生活を送るためには、希望する課外活動、サークル・部活動への参加に際し妨げとなるバリアを極力取り除かれなければならない。
修学上示されている要件や基準ほどの明確さや厳密さはないにせよ、課外活動、サークル・部活動への参加に際し、何らかの条件を課しているケースも散見される。課外活動参加時に、参加を希望する障害のある学生と共に活動する学生たちとの間での調整が必要となることを想定し、支援できるように努めなければならない。
また、高等教育機関に通う学生の中には、学生寮での生活を選択する者もあり、当然のことながら障害のある学生にとっても例外ではない。入寮に際し妨げになるような要件や基準はないか確認し、入寮審査等の際に適切な判断がなされ、必要に応じて合理的配慮が提供されるよう変更・調整を求めなければならないことにも留意する。
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6-4-1サークル・部活動への参加に際し、入会(部)条件等を学生と共に確認し、参加できるように調整することができる。
[意図]
課外活動も高等教育機関での豊かな生活を送るために、障害のある学生がサークルや部活動に参加を希望する際、当該団体が入会(部)条件を明示している場合に、それが参加の妨げになる場合には、参加に向けた合理的配慮提供についても検討する必要がある。また、参加条件等が明示されていない場合には、参加の障壁となるような条件等が暗黙裡に課せられるようなことがないか確認すると共に、必要に応じた調整が必要になる場合があることにも留意する。
Good Practice
- 課外活動への参加についても、高等教育機関において合理的配慮提供の対象となることを理解し、参加に向けた適切な変更・調整を行うことができる。
よくある間違い
- 課外活動は高等教育機関における正規の活動ではないため、参加に際する支援は必要ないと判断し、適切な支援を怠る。
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6-4-2寮生活を希望する学生と共に入寮条件等を確認すると同時に、必要な変更・調整をすることができる。
[意図]
実家を離れ学生生活を送る必要がある学生にとって、学生寮への入寮は修学上外すことができない必須事項である。障害のある学生に対しても、ハード面・ソフト面での事前的改善措置を行い、寮生活を送るための環境整備、条件整備が実施されるべきであるが、障害のある学生にとってバリアとなりうるような入寮条件を設定している高等教育機関も散見される。入寮に際しての条件等で差別的取り扱いが生じないようにするためにも、このような場面においても高等教育機関の側が主体的に変更・調整を行い、入寮を可能にする必要があることに十分留意する。
Good Practice
- 障害のある学生が入寮を希望する場合に備えて、事前的改善措置としての施設面でのバリアフリー化を進めるなどの対応を進める。入寮に際して示されている条件等が、排除規定になっているものがないかを十分に確認すると共に、必要に応じて変更・調整を行い、障害のある学生が寮生活を送れるようにする。
- 学生寮がない、あるいは入寮が困難な場合には、自治体や地域の民間不動産業者などと協議し、障害のある学生の入居に関して支援できる体制をとっている。
よくある間違い
- 学生寮は障害のある学生の生活に適した施設整備や規定等が整えられていないという理由で、障害のある学生の入寮を拒否する。
6-5 レポートやプレゼン等の課題に関連した、要件や基準に配慮した支援ができる
日本の大学で展開されているシラバスの内容では、レポートやプレゼン等で何をどう評価しているのか明示されているわけではなく、学生からすると、「様式」や「お作法」など暗黙裡に示されたり共有されたりしているものように見えてしまったり、授業中に教員から突如示される出題意図等から、何をどう準備するべきか、書くべきかを推量することが求められるようなこともある。
他方、教員からすると、学領域ごとにレポートやプレゼン、評価のポイントや基準は共有されており、初年次教育等を通じてそれを明示する高等教育機関が多数を占めるようになってきている。しかし、特に発達障害の傾向のある学生には共有されにくく、要件や基準として理解されず、課題提出に困難さを感じる学生を生むことにつながっている。そういったケースを減らし、学生を支援するために留意すべきポイントをこの項にて確認する。
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6-5-1学領域ごとに示されている、レポート執筆やプレゼン資料作成の要件や基準について、学生と共に確認し課題への苦手意識を軽減することができる。
[意図]
レポート執筆やプレゼン資料の作成に困難さを訴える学生は一定数に上る。学領域ごとに設定されているレポート執筆等の様式、ルール、評価のポイント、引用資料、参考資料の表記の仕方などについて学生と共に確認し、その必要性の理解を促すことは、課題遂行のための最低条件であることの理解を促す必要がある点について留意したい。
Good Practice
- 初年次教育で使用される教材を学生と共に確認し、様式やルール等が設けられている理由やその必要性について学生と共に確認し、学生が納得できる形でそれらを活用できるように支援する。
よくある間違い
- レポート執筆のお作法等は、経験を積みながら自然に獲得されるものと放置し、課題提出の遅れや未履行を生じさせ、単位取得が困難になってしまう。
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6-5-2教員が授業時に課題を出す際に確認すべき要件や基準(課題の目的や要求水準等)について、具体的に確認できるよう促したり、必要に応じて共に確認したりすることができる。
[意図]
授業時に発表される課題について、作業課題、その目的、要求水準を教員が明示しているにも関わらず、それをうまくキャッチすることができない学生は一定数存在する。対策として、学生が確認すべきポイントの確認、メモの取り方等を支援する。それらの情報をキャッチできなかった場合に教員に質問をする。合理的配慮として課題を出す場合には、これらの情報をテキストベースで学生に明示するよう担当教員に求めるなどの対応が必要であることに留意したい。
Good Practice
- 課題の取り組み方について、学生ごとのこだわりやつまずきのポイントを見たてつつ、具体的な実行を支援する。
- あいまいな課題の出し方をする教員がいる場合に、学生と共に課題の要件や基準を確認する。
- それを自力ですることに困難さがある学生であることを把握しながら、「ちゃんと先生の話を聞きなさい」「メモを取りなさい」といった程度の助言しかせず、具体的な対応策を示さないままそれで「よし」としてしまう。
よくある間違い
6-6 学内実習に関連した要件や基準に関連し、関係者と具体的項目を確認しながら、合理的配慮を提供することができる
資格取得を目標とする学部・研究科等や資格取得を卒業要件としている高等教育機関では、基準等と照らし合わせながら、学内の実験・実習・演習など(以下、学内実習等)における合理的配慮の内容を導き出すことが肝要である。
ここでは、学外実習等を想定した学内実習等について述べる。
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6-6-1要件や基準を絡め、学内実習等に対する見通しを持つことができる。
[意図]
学内実習等は障害の有無に関わらず学生にとって、見通しが立てにくい学習状況を生む。そのため、要件や基準やその中に示されている内容を吟味し、学生と共に必要な支援について具体的に考える。
Good Practice
- 学内実習等では、学年進行により求められる内容、レベル、そして実習環境の違いが生じることの見通しを持たせつつ、その段階に応じた適切な配慮内容を考慮し、学生に提示する。
- どのような環境の下で、どのような器具を用い、そしてどのような形式で学ぶのかを事前に確認する。
- 要件や基準が明示されている場合には、学生とその内容を確認することにより、必要な支援内容を確認する。
よくある間違い
- 設備面の改修や特殊な器具の準備、そして実習担当者との調整には時間を要するということを理由にし、実習に向けた準備を拒否する。
- 学外実習等の傾向を見通して学内実習等に反映させることをせず、その場しのぎの対応しかしない。
- 学年進行により高度化する実習等に関して、学生が準備することで対応可能性が高まるにも関わらず、実習担当者を中心とした関係者が学生に見通しを持った助言ができるように支援しない。
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6-6-2要件や基準を満たすための具体的な調整ができる。
[意図]
学内実習時等で提供される合理的配慮は、講義と比べ要件や基準を意識する場面が増える。検討の際に実習等で求められるパフォーマンス、実習場の環境、条件等を具体化・可視化する必要がある。
Good Practice
- 学内実習等において、学生が習得することを求められている要件や基準と比較し、本人、担当教員、そして学外実習機関等の職員と共に建設的な対話の場を設定する。
- 要件や基準を満たすために必要な合理的配慮の内容について、提案・調整し、双方の同意を導き出す。
よくある間違い
- 適切な事前的改善措置や環境調整をせずに、学生への要件や基準への対応のみを迫ることで、実質的に実習等への参加を拒否する。
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6-6-3既存のノウハウや手引書を生かすことができる。
[意図]
要件や基準を満たすことを目指すための変更・調整は、新規に取り組むべきことばかりではない。実習・実験等においてすでに提供され、工夫されていることの中から活用や準用できるものはないかを確認する。
Good Practice
- 工程や作業および作業手順などに関する手引書、安全配慮のための慣習など、これまで培ってきたノウハウの利便性を認識すると共に十分に活用し、学生の支援ニーズに対応する。
よくある間違い
- 要件や基準を満たすことを目指すための合理的配慮として提供される内容は、すべて新規に検討されるものであると誤解し、検討にむやみに時間をかけると共に、実習等の担当者の負担感をいたずらに高める。
6-7 学外実習に関連した要件や基準に関連し、関係者と具体的項目を確認しながら、合理的配慮を提供することができる
資格取得を目標とする学部・研究科等や資格取得を卒業要件としている高等教育機関においては、ほとんどの場合、学外実習等が課せられている。
学内実習等において学生は、予見可能性が高く、予習や反復学習が可能である。しかし、学外実習等では、学内と異なり現場での即時対応を求められるため、それまではその兆候が見られなかった学生でも不適応を起こすケースが目立っている。
また、学外実習等における主な指導者は現場の職員になる場合が多く、学生の支援ニーズについて高等教育機関と現場職員間との情報共有と、支援に関する緊密な連携が求められる。それら諸条件を考慮しつつ、学外実習等における要件や基準を満たす上での課題をクリアするため、合理的配慮を導き出すことが肝要である。
ここでは、学外実習等を想定した学内実習等について述べる。
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6-7-1学外実習の内容を確認し合理的配慮の内容を検討するため、高等教育機関の実習担当者から常に最新の要件や基準となる「実施要領(実習要領やマニュアルなど)等」を入手しておくことができる。
[意図]
学外実習において、どのような合理的配慮が必要であるかを具体的に確認するためには、「実施要領等」を確認し、実習参加時の留意点、評価について、学外実習機関(病院、学校、薬局、工場等)との関係性などを確認する必要がある。実習直前に学生が「実施要領等」を入手するタイミングと同時に障害学生支援担当者がそれを入手したのでは、変更・調整が間に合わなくなることに留意する。
Good Practice
- 学外実習実施時には「実施要領等」の確認が重要な意味を持つ。障害学生支援担当者は事前に合理的配慮提供の準備を十分に行うために、常に最新の「実施要領等」を高等教育機関の実習担当者から、障害学生支援担当者にも配付してもらえる体制を整える。
よくある間違い
- 「実施要領等」を確認せずに、障害学生支援担当者の経験や憶測だけで学生の支援ニーズを査定してしまい、実態に沿った支援計画を立てられず、学生が実習先で困難な状況に陥る。
- 学生自身が「実施要領等」の見方や押さえどころを確認できていないにも関わらず、わかっているだろうという安易な判断をしてしまい、学生が実習先でうまく立ち回れなくなってしまう状況を作り、学外実習機関に所属する実習指導者に苦言を呈される。
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6-7-2学外実習を実施する前提として、学外実習機関における学生への、配慮義務等の責任の所在を明確にすることができる。
[意図]
学外実習等が行われる場合には、学生を送り出す側の高等教育機関に合理的配慮提供の責任が生じるため、高等教育機関の実習担当者に働きかける。また、学外実習機関に所属する実習指導者にも、その機関において提供する支援には、学生等に対する合理的配慮提供の義務が生じることを認識してもらう。
Good Practice
- 学内実習等において、学生が習得することを求められている要件や基準と比較し、本人、担当教員、そして学外実習機関等の職員と共に建設的な対話の場を設定する。
- 要件や基準を満たすために必要な合理的配慮の内容について、提案・調整し、双方の同意を導き出す。
よくある間違い
- 学外実習等における学生指導の責任主体を明らかにせず、高等教育機関と学外実習機関で責任を互いに押し付け合う。
- 障害のある学生の実習実施を依頼することにより事故が起きてしまい、次回から実習を受け入れてもらえなくなるのではと過剰に心配し、具体的な危険性や安全確保への検討を行わず、実習への参加を困難にさせるような言動をする。
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6-7-3実習で課せられた課題を「要件や基準(実施要領等)」を参照しつつ明確にした上で、学外実習機関との情報共有や支援等に関する連携等において、留意点を押さえることができる。
[意図]
「実施要領等」には、障害のある学生の支援ニーズに配慮した内容が盛り込まれることは稀である。その際に、不足する情報を障害学生支援担当者の視点から関係者に注意喚起することは、実習履行のために重要な意味をもつことに留意する。
Good Practice
- 「これができないならば不適格」という考え方ではなく、「どのような配慮が障害特性に対する合理的配慮となるか」を検討する考え方について、学外実習機関と共通認識を持ち、「実施要領等」に記載されていない配慮事項についても検討できるようにする。
- 体調の維持のため休息をとりながら学外実習等を進める必要がある学生や、実習期間の前後に学ぶため(予習・振り返り)の時間があることで達成できる学生もいることを認識する。そのため、インターバルを置きながら、時間的猶予を与えつつ技術を獲得する機会を保証するために、高等教育機関側に長期履修制度の活用ができるように働きかけを行う。
よくある間違い
- 具体的な支援内容について検討せず、学外実習機関による補助者の配置や他の学生からの支援を受けさせるなどの対策に委ねてしまい、実際に学生が必要とする支援の提供に努めない。
- 「実施要領等」だけでは障害のある学生にとって必要な情報が提供されているとは言えないにも関らず、「実施要領等」を読み込めないのは学生のせいと思い込み、中途半端な情報の提供しか行わない。
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6-7-4学外実習機関の受け入れに対し、「要件や基準(実施要領等)」を意識した高等教育機関側の態度を明確に示すことができる。
[意図]
合理的配慮の提供において、「本質を変えない」ことと、「機会の保障」についての考え方に関して、学外実習機関とも理解を共有する必要が肝要であることを「実施要領等」に盛り込むよう働きかける。
Good Practice
- 学外実習機関を対象とした研修会等を高等教育機関と合同で開催するなど、要件や基準を満たす合理的配慮の在り方について、実習指導者の理解・啓発に努める。
よくある間違い
- 医療系臨床実習の患者や教育実習時における子どもたちを危険にさらしてしまうのではないかと過剰に心配し、学生側の不利益をどう回避するかということに考えが及ばない。
- 個別・具体的な検討を行わず予期不安に基づき、安全配慮義務を一律に過剰に適応する。
6-8 CBTやOSCEといった国家試験等の資格取得に関連した要件や基準について、関係者と具体的項目を確認しながら合理的配慮を提供することができる
資格試験の取得を目指す学部学科において、資格取得に至るプロセスで学生がクリアしなければならない要件や基準の明確化が進められている。
特に医学領域におけるCBTやOSCEの導入やそれらの国家試験化の流れは、障害のある学生にとって新たな障壁になる可能性が高まっている。そのような状況下において、学生と共に提示された要件や基準を確認し、それをクリアするために必要な合理的配慮について検討することは、必須事項といえる。本項ではそれらへの対応策について確認する。
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6-8-1資格取得に至るロードマップを入学前~入学初期に、学生と共に確認することができる。
[意図]
資格取得に向けたプロセスは、所属学部の授業カリキュラム中に考慮され、設定されていることがほとんどである。しかし、障害のある学生に特有の支援ニーズや、資格試験やそれに至るプロセスでクリアすべき諸課題、実習等で特異的に生じる支援ニーズやそれへの対応が認識されていないことも散見される。資格試験実施団体との合理的配慮に関する調整や、学生自身が取り組まなければならない準備の時間を十分に確保するため、早い段階からロードマップの確認が必要であることに留意する。
Good Practice
- 学生が専門職として確実に資格取得に至れるようにするため、修学上のカリキュラムへの対応に終始するのではなく、国家試験やそれに付随してクリアしておくべき要件や基準に関する情報を収集し、学生と共に日々の修学支援の中に対応策を盛り込み支援を実施する。
よくある間違い
- 資格試験直前になって支援ニーズが生じることが発覚し、合理的配慮提供の内容も不十分なものとなり、学生がうまく対応できない状況を招いてしまう。
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6-8-2資格試験実施団体から、資格取得要件や基準に関する情報や合理的配慮に関する情報を収集し、常にアップデートした状態にしておくことができる。
[意図]
資格試験実施団体が提供している実施要領やブルーペーパーなどを入手し、資格試験やそれに付随する実習や試験がどのように実施されるのかを確認しておかなければ対応が困難である。対策には時間がかかるケースもあるため、情報は早めに入手しておく必要がある。なお、資格試験の設定等過渡的な状態にあるものもあるため(例えば、令和5(2023)年度から公的試験化された「医学生臨床実習前共用試験」など)常に最新の情報を入手し、合理的配慮の側面からも学生が不利益を被らないよう留意する。
Good Practice
- 修学支援と資格取得支援は密接に関係していることを確認し、学外の団体が実施する資格試験に対する情報を入手すると共に、合理的配慮に関する情報は適宜関係教職員と共有するようにする。
よくある間違い
- 資格試験に関する情報は、学生本人が入手すべきであると放置し、それへの対策を講じる機会を逸してしまう。
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6-8-3CBTやOSCE、その他の資格試験や語学支援等における、合理的配慮提供に関する手続き方法や窓口について把握し、要件や基準に照らし適切な配慮申請への支援ができる。
[意図]
資格試験等にける合理的配慮提供の取り組みは進められているが、主催団体においても十分な対応ができない可能性もある。合理的配慮提供に関わる変更・調整についての交渉には時間を要する場合もあるため、手続き方法、締め切り、相談窓口等を支援部署として把握し、学生や関係教員と共に対応できる体制を作ったり、助言したりできるよう留意する。
Good Practice
- 資格試験受験における合理的配慮申請に関するノウハウを蓄積し、さまざまな場面での対応可能性を高める。
- 資格試験に関する合理的配慮申請は、学生自身が行うべきこととし助言や支援を行わず、学生が合理的配慮を十分に受けられない状況を招いてしまう。
よくある間違い
6-9 研究室配属、卒業研究・学位論文執筆に関連した要件や基準について確認し、合理的配慮を提供することができる
高等教育機関における修学を進めるうえで、上級学年や大学院等での生活の拠点となる研究室への配属、そしてそこで取り組む卒業研究や学位論文の執筆は、学生生活にとって重要な意味を持つ過程である。
研究室配属、卒業研究・学位論文の執筆等においても要件や基準は、明示されているものと暗黙裡に共有されているものなど多数存在する。本項ではそれらが障害学生の修学機会の障壁とならないようにするため、どのような点に留意すべきかを確認する。
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6-9-1研究室配属に関連する要件や基準について、学生と共に確認することができる。
[意図]
研究室への配属については、大学や学部学科ごとに慣習的に決定されてきた側面もあり、明示されている場合と暗黙裡に構成員の中で共有されている場合があるなど、合理的配慮を提供する上で注意すべき項目の一つである。下級学年での成績順に機械的に配属を決める場合もあれば、学生間の直接の話し合いの場を設け決定されるケースなどさまざまである。こういった状況下では、障害のある学生が希望する研究室への配属に際し不利益を被る可能性がある。研究室配属に関する要件や基準について早期に把握し、成績面での対策等にも取り組む必要がある。
Good Practice
- 研究室配属も機会の保障を求める合理的配慮の観点から、必要な配慮は十分になされるべきという考え方を教職員と共有し、要件や基準が適切な形で適応されるように働きかけると共に学生とも共有する。
よくある間違い
- 研究室配属に関して障害学生支援担当者が関与すべき項目はないと誤認し、適切な対策や準備を怠ったため、学生が希望する研究室に入ることができず、修学意欲を逸するような事態を招く。
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6-9-2研究室内で共有されるローカルルール等の要件や基準について学生と共に確認し、差別的なものがあれば撤回や改善を求めると共に、学生が遵守することが妥当なものである場合には、それへの対応策について検討することができる。
[意図]
研究室での生活は、教員との関係が濃密になるばかりでなく、他の学生との関係も濃い場となる。研究室の運営は担当教員に任されており、教員ごとに研究室の生活上のルールを定めている場合がある。それらは教員の経験に基づいて決められている場合が多いため、障害のある学生の生活には適さなかったり、差別的なものであったりする場合もあるため、適切な対応をとれるよう留意する。
Good Practice
- 研究室配属の決定プロセスにおいて、担当教員と学生の支援ニーズについて確認する際、学生と共に研究室のルール等についても確認し、不都合がある場合には変更・調整を促すなどの対応をする。
よくある間違い
- 研究室の運営に口出しをすべきではないと思い込み必要な対応をとらず、障害のある学生が不適応を起こしてしまう。
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6-9-3卒業研究・学位論文執筆時における要件や基準について確認し、合理的配慮を提供することができる。
[意図]
卒業研究や学位論文執筆において達成すべきとされる要件や基準は、学部や研究科ごとに細かく定められていることが多く、担当教員からの指導の中で確認することが多い。しかし、それらの要件や基準が障害のある学生にとって障壁になる可能性の有無について、障害学生支援の経験が少ない教員には判断が困難な場合がある。障害学生支援担当者として学生と共に要件や基準について確認し、合理的配慮の内容を変更したり調整したりすることができることは、重要な意味を持つことに留意する。
Good Practice
- 研究ガイドや論文執筆要領などを学生と共に確認し、合理的配慮について考慮する項目がないか確認する。また、合理的配慮提供を研究室担当の教員に依頼することになるため、スムーズに実施されるよう障害学生支援関連部署とも連携が取れるような体制を構築する。
よくある間違い
- 卒業研究や学位論文執筆において達成すべきとされる要件や基準は、障害学生支援の担当者には理解できないものであると支援に積極的に関わろうとせず、学生が思うような成果を上げられないような事態を招いてしまう。
6-10 就職活動・社会移行に関連した要件や基準を確認しつつ、移行支援における合理的配慮の調整ができる
所定の教育課程を修め、国家試験等もクリアしたのち、または同時並行的に就職活動(医師ならばインターン先の選定)が行われる。
資格取得ができた後でも実際に職を得るためには、要件や基準を満たしながら職務を遂行する上で必要となる条件整備、施設整備等の環境整備を含む合理的配慮の提供ができるよう事前の調整が必要な場合も想定される。この際も要件や基準のネガティブな側面がいたずらに強調され、就職(インターン)希望者に不利益が生じないように留意する。
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6-10-1就職活動等の移行期において、要件や基準を意識した支援を行うことができる。
[意図]
就職(インターン)先から特に達成を求められる要件や基準の項目のうち、障害によって達成が困難だと思われる項目を見極め、それらに対して求められる合理的配慮の内容について学生と共に検討し、就職先の機関に提示する。
Good Practice
- 学生が職務を遂行する上で調整が必要な自身の特性を知り、自分のことを自ら伝え、配慮や支援について伝えるためのセルフアドボカシーを強化する。
- 指導教員や学生と共にポートフォリオへ、支援に関連する情報も取り入れつつ作成するなどの取り組みを行う。
- 職場環境を把握し、必要な整備について確認し、合理的配慮提供がなされるよう提案する。
- 学生が働きやすい職場についての情報を常に収集し、先行事例の収集に努め、活用できるよう心掛ける。例えば、ユニット型の働き方をしている職場では、何らかの配慮がなされていることが多い。具体的には、薬局・薬剤部等における調剤部署の構造化、複数職員での確認、データの共有など。
- 学生の就職活動に関連する情報が、企業等から学内のキャリア支援部門等にだけ送付されてくる場合がある。障害学生支援部門にも情報共有されるよう、連携を常に意識することができる。
よくある間違い
- 学生が就職先の仕事内容(職務内容・定義)を事前に十分確認しないまま就職することにより、配属先が機械的、自動的に決められてしまい、不適応を招いてしまう。
- 学生が支援ニーズの特性上、職務執行が難しい仕事については、事前に調整するよう依頼したり、不適応の予防策を講じたりするのが望ましいにも関わらず、それらを行わない。
- 就職先担当者の負担を過剰に斟酌し、適切な事前に必要な情報共有を行うことを怠る。
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6-10-2就職先との学生の就職に関する研修会などを共同して、開催することができる。
[意図]
高等教育機関の支援に関する取り組みやそれに関する考え方、特に要件や基準との向き合い方が学生の就職先とずれてしまうと、移行がスムーズに行われなくなってしまう恐れがある。それを抑止するため、高等教育機関と就職先の組織とが共同して研修会を開くことで、共通の認識を醸成することが可能になる。
Good Practice
- 高等教育機関と就職先とが共同して研修会や意見交換の場を持つことにより、要件や基準を含めて支援にブレやズレが生じないように工夫することができる。それにより移行期の学生、卒業生の気持ちや意識のズレやブレを防ぎ、不安や焦りを生じさせないようにする。
- 就職先が高等教育機関での修学上の支援について知る機会を持つことができ、高等教育機関の教育および支援の価値を認識することができ、就職先での支援のあり方を検討するきっかけを掴みやすくする。
よくある間違い
- 高等教育機関での支援が就職先の支援との乖離が激しく、学生が混乱してしまう。
- 就職先に学生、卒業生がうまく適応できなかった場合、就職先の組織が高等教育機関での支援の不十分さをことさらに指摘するようなことが起きる。
- 高等教育機関と就職先の思惑にズレが生じてしまうことにより、要件や基準が意味をなさなくなってしまう。
- 高等教育機関での支援は修学支援であるにも関わらず、就職の準備講座のような捉えられ方をされてしまい、高等教育機関の教育および支援の価値を著しく損なってしまう。
6-11 高等教育機関における、要件や基準に関連する理解・啓発(策定、修正、変更への関与等)に取り組むことができる
社会的場面において要件や基準を示すことは、人々に何らかの形で特定の価値観や価値基準を示すことと同義である。要件や基準を策定、運用、適応する場面では、そこに示される価値観等が、障害のある人にとって不利益のある状態を惹起しないように、すべての人々があらゆる場面で意識し続けなければならない。
障害学生支援担当者は高等教育機関をフィールドとしつつ、要件や基準の適切なあり方について啓発し続ける立場にあることを、強く意識し行動する必要がある。また、すでに日本の大学でも策定されている三つのポリシー、シラバス等に対しても、必要に応じ修正・変更を求めることも重要である。その際、欧米では暗に障害のある学生を差別したり、差別を助長するような規定が盛り込まれたりしないように、障害学生支援担当者および専門的知識を有するものが関与することが義務付けられている国があることも参考にする必要がある。
日本においても学内で新たなポリシー、教育要件、評価要件、そして評価基準等が策定される場合や、それらの修正・変更の場面に障害学生支援の知見を有する者が関与し、策定に関わる教職員等に対して既存の差別的表現を修正したり、新たな差別的表現が盛り込まれたりしないように、啓発活動を行う必要がある。さらに、高等教育機関の教員および研究者は、専門職養成のための要件や基準策定の場に関与することも多い。そのような任に当たる場合、不当な差別的項目を盛り込むことなく、適切な項目の策定の必要性を十分に意識できるよう、不断の努力が必要である。
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6-11-1高等教育機関における、要件や基準と合理的配慮の関係について、学生に対する啓発活動を行うことができる。
[意図]
障害の有無に関わらずすべての学生に対し、要件や基準はすべてを自力で達成しなければならないものではなく、合理的配慮を受けたうえで達成してもよいものであることの理解・啓発を行う。
Good Practice
- 学生が職務を遂行する上で調整が必要な自身の特性を知り、自分のことを自ら伝え、配慮や支援について伝えるためのセルフアドボカシーを強化する。
- 指導教員や学生と共にポートフォリオへ、支援に関連する情報も取り入れつつ作成するなどの取り組みを行う。
- 職場環境を把握し、必要な整備について確認し、合理的配慮提供がなされるよう提案する。
- 学生が働きやすい職場についての情報を常に収集し、先行事例の収集に努め、活用できるよう心掛ける。例えば、ユニット型の働き方をしている職場では、何らかの配慮がなされていることが多い。具体的には、薬局・薬剤部等における調剤部署の構造化、複数職員での確認、データの共有など。
- 学生の就職活動に関連する情報が、企業等から学内のキャリア支援部門等にだけ送付されてくる場合がある。障害学生支援部門にも情報共有されるよう、連携を常に意識することができる。
よくある間違い
- 学生が、取得を目指す学位や資格に関連した要件や基準を示された時、自らの支援ニーズと照らし合わせ、達成困難であると誤解し、修学や資格取得をあきらめさせてしまう。
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6-11-2教職員に対する啓発活動を行うことができる。
[意図]
高等教育機関において、要件や基準が拡大解釈され過剰に適用された結果、学生に対して誤った指導や配慮提供がなされてしまう可能性がある。要件や基準のネガティブな側面での運用に警鐘を鳴らし、ポジティブな面での活用が図られるよう理解・啓発を促す。
Good Practice
- 要件や基準を自力でクリアすることが容易ではない学生に対しては、講義・実習・演習等のあらゆる場面において適切な合理的配慮提供について検討し、その提供を受けたうえでクリアすればよいことを、実践場面や研修場面における関係者に対して不断の啓発活動を行う。
よくある間違い
- 啓発活動が十分になされないことにより、学内外の関係者が要件や基準を欠格事項と同等のものとみなして、実習参加拒否等の不適切な対応を行う。要件や基準を欠格事項と同等のものとみなして適用し、合理的配慮の提供を検討しないまま、必修の実習への参加を認めない。その結果として、進路変更を迫る指導を行う。
- 学生に対し実習時に自力でクリアできない課題が想定される場合、実習担当者に迷惑をかけてしまうということを理由に、実習への参加を拒否する。
- 具体的な支援内容について検討せず、学外実習機関による補助者の配置や他の学生からの支援を受けさせるなどの対策に委ねてしまい、実際に学生が必要とする支援の提供に努めない。
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6-11-3既存の学内の諸規定に関する、修正・変更を促すことができる。
[意図]
既存の学内の三つのポリシー、要件や基準、シラバス等に、暗に障害のある学生に対する差別を生じさせるような表現がないか確認する必要があり、そのような事項が認められた場合には、それに対する修正・変更を促すアクションを取る。
Good Practice
- 既存の要件や基準に関して、差別を助長する表現が含まれていないか検討し、修正・変更を行う。
よくある間違い
- 既存の要件や基準を絶対視し前例がないことなどを理由にしたり、旧来の慣習等を偏重したりすることで、学生が求める変更・調整を拒否する。
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6-11-4新たな学内の諸規定の策定にむけ、具体的なアクションを起こすことができる。
[意図]
学内において要件や基準に類する規定等が策定される機会は、しばしば生じる。その際に差別的な項目が盛り込まれないようにするため、助言的立場から適切な関与ができるように努める。
Good Practice
- 学内における学生および、障害学生支援のハブ的な役割を担う立場であると共に、学内の関係者から支援に関する多種多様な相談を受けることもある。また、学内教職員から、要件や基準の策定などについて参考意見を求められることも想定される。そのような場合、適切な助言等ができるよう、要件や基準に関する知見を常に意識して身に付けている。
よくある間違い
- 新たに要件や基準が策定される場面に、自らが関与できない状況を甘受し、具体的なアクションを起こさない。
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6-11-5職種別の要件や基準《その分野の専門職としての根幹的な規定・認定要件》の策定にむけた、啓発活動を行うことができる。
[意図]
高等教育機関の教員はそれぞれの専門分野における、要件や基準作りにアクセスできる立場にある。その場合において、障害のある学生に対する意識を向けられるように、啓発活動を行う。
Good Practice
- FD・SD 等を通じて適宜、情報提供を行うと共に、日々の学生への支援を通した啓発活動を行う。
よくある間違い
- 専門性の担保に障害学生支援は直接関係がないという理由で、要件や基準の策定の場面において障害のある学生のことを意識しない。
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6-11-6学生を受け入れる学外機関に対する啓発活動を行うことができる。
[意図]
学生を受け入れる学外実習等の機関においても、要件や基準が絶対的かつ変更不可なものとして運用される可能性がある。特に欠格事項として運用されるケースも散見されることから、要件や基準の適切な活用について、常に意識されるよう啓発活動を行う必要がある。
Good Practice
- 高等教育機関と受け入れ先機関との合同研修の場を設定し、理解・啓発に努める。
よくある間違い
- 高等教育機関と受け入れ先機関との話し合いの場が設定できないことにより、受け入れ機関の判断を最優先させる。
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6-11-7就職先に対する啓発活動を行うことができる。
[意図]
学生が要件や基準を満たし資格取得を達成できたとしても、受け入れる職場での理解がなければ、学生が学んだことを活かし、専門職として活躍する機会を得ることは難しい。要件や基準と合理的配慮の関係への理解、学生がそれまでに獲得してきたセルフアドボカシーのスキルへの理解等を通じ、学生の進路先として適切な対応がなされるよう啓発活動を行う。
Good Practice
- 就職先に対して、学生の同意を得たうえで、修学上の合理的配慮として提供した項目等の申し送りを行うことで、卒業生が適切な労働環境の調整を受けられるよう働きかける。
- 地域の企業連合体主催のセミナーや大学等で実施する研修機会を通じ、障害者雇用促進法等について解説する機会を設けると共に、障害のある人の受け入れに関する適切な対応についての情報提供を積極的に行う。
- インターンシップを含む学外実習等の場面を通じて、要件や基準を満たすための合理的配慮の在り方を互いに検討し合い、理解を深め、職場において適切な合理的配慮の提供がなされるように務めることで、学生の就職先の選択肢を広げる。
よくある間違い
- 受け入れ先機関での理解・啓発が十分でないため、学生の就職先を確保できなくなる。就職後に不適応を起こす卒業生がいると、今の採用に差し障りがあると過剰に懸念することにより、学生が希望する就職先へのアクセスを認めようとしない。
関連資料
- 文部科学省中央教育審議会大学分科会大学教育部会「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマポリシー)
- 「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラムポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッションポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」平成28(2016)年3月31日
- 文部科学省中央審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(答申)(中教審第211号)
- 補論『中央教育審議会等と関連政策の歩み』平成30(2018)年11月26日