STANDARD 5 合理的配慮等の必要性・合理性の判断に役立てる根拠資料の理解

by SIG-DG

5-0 はじめに

このQIは、合理的配慮提供における根拠資料の内容や運用についてまとめたものである。障害のある学生の支援には合理的配慮だけでなく、学修支援や学生相談など、さまざまな学生支援のリソースが利用可能である。これら合理的配慮以外の支援において、一般的には根拠資料を求めることはない。

機能障害がある学生であっても、合理的配慮が必須ということではないし、学生が合理的配慮を望まない場合もある。根拠資料や合理的配慮にこだわらず、学内で利用可能な学生支援の情報や関連の学外機関の情報も共有しながら、大学生活をより良いものにするための方法を学生とともに考えることが重要である。

5-1 根拠資料と合理的配慮

合理的配慮の申請にあたり、原則として根拠資料の提出が求められる。支援者は根拠資料がどのようなものか、なぜそれが必要か、どのように利用するかを理解する必要がある。

参考

「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)」では、根拠資料について以下のように記載されている。「原則として,障害のある学生の申出に際しては,個々の学生の障害の状況を適切に把握するため,学生から障害の状況に関する根拠資料の提出があることが必要である。根拠資料としては,障害者手帳の種別・等級・区分認定,適切な医学的診断基準に基づいた診断書,標準化された心理検査等の結果,学内外の専門家の所見,高等学校・特別支援学校等の大学等入学前の支援状況に関する資料等が挙げられる。また,適切な配慮内容決定のためには,本人が自らの障害の状況を客観的に把握・分析した説明資料等も有効である。これらのうち,利用できる根拠資料を複合的に勘案して,個々の学生の障害の状況を適切に把握する必要がある。」

  • 5-1-1合理的配慮提供の際に求められる根拠資料とはどのようなものか理解している

    [意図]

    根拠資料は、合理的配慮の対象であることの判断、合理的配慮の内容の適切性の判断のための根拠となる資料であることを理解している。

  • 5-1-2根拠資料は何のために必要か説明することができる。

    [意図]

    根拠資料は、学生の機能障害、現在の困難状況を理解し、大学の方針や規程に則って合理的配慮を提供するために必要となるものである。学生にも根拠資料の目的や内容について説明し、それを準備できるよう支援する。

  • 5-1-3根拠資料をどのように利用するべきかを説明することができる。

    [意図]

    根拠資料を学生と大学の対話のベースとし、情報を共有するために利用する。その学生にとって、なぜ授業において変更・調整が必要なのか、授業担当教員等が理解できるように、根拠資料に含まれた情報から必要に応じて合理的配慮依頼文書に記載する。

  • 5-1-4根拠資料を学生の自己理解のための資料として活用することができる。

    [意図]

    根拠資料は合理的配慮に関する判断のための資料であるが、多くの場合、学生が自己理解を深めるために活用できる内容を含んでいる。根拠資料の内容について学生が十分に理解していないようであれば、支援者が説明して理解できるようにする。その内容と学生が現在感じている困難、合理的配慮の内容がどう関連するかについても説明できるようにする。これらのプロセスは、学生が自身に必要な合理的配慮を求める力をつけていくためにも重要である。

よくある間違い

  • 根拠資料を求めることは学生の負担になるので、学生にとってメリットがないと考える。
  • 根拠資料の条件を厳しくし、合理的配慮の提供を断る理由とする。
  • 学生を傷つけないように、家族が資料を準備して本人には知らせず手続きをする。
  • 医師の診断書や障害者手帳など、公的書類がありさえすればよいと考える。(形式的にだけこだわる)

5-2 根拠資料の内容

  • 5-2-1根拠資料には学生の機能障害についての専門的・客観的記述が含まれなければならないことを理解している。

    [意図]

    法律上、合理的配慮の対象は「障害者」であり、障害者の定義は「心身の機能の障害と社会的障壁によって継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」となっている。そのため、根拠資料には機能障害に関する専門的・客観的視点から記述される情報が含まれる必要がある。

    機能障害があるとは、単に学生が大きな困難を感じているということではなく、「身体の構造や生理機能(精神機能を含む)における喪失や異常」のある状態であり、それが「確立された統計学的な正常範囲からの有意差を指すもの」(すなわち具体的に測定され、標準平常範囲からの逸脱している)という意味に限定して使われるべきである(世界保健機関,2001)。

    そのため、機能障害は、医学的診断基準や標準化された検査の結果に基づいて判断されることが基本となる。また、機能障害があるということが示されれば、明確な診断がなかったとしても合理的配慮を提供する対象となる場合がある。

    よくある間違い

    • 機能障害の資料があるにもかかわらず、医師の診断がなければ合理的配慮はいっさい認めない。
    • 客観的な根拠がなにもなく、明確に機能障害を現認することもできない状況で合理的配慮を決定する。
  • 5-2-2根拠資料に記載される機能障害は、学生の修学上の困難に関連するものでなければならないことを理解している。

    [意図]

    根拠資料の本質は単に学生に何らかの機能障害があるということを証明することではなく、学生本人が抱えている修学上の困難が機能障害に関連することを明確に示すことである。その機能障害が修学上の困難と直接結びついていない場合は、合理的配慮の根拠とはならない。ただし、学生の生きづらさやその他の困難さを理解する上では重要な資料となりうる。

    学生が根拠資料を得る過程を支援するために、支援者は学生の抱えている修学上の困難をできるだけ具体的に(いつ、どこで、どんなときに、どれくらいの頻度で、何ができない/何をするのが難しいのか。それによってどのような不利益が生じているのか。)把握しなければならない。

    よくある間違い

    • 医療機関で発行された診断書であれば、必要な情報が不足していてもそれを求めずに配慮案を認める。
    • とりあえず医療機関で診断書をもらってくるように学生に説明し、どのような情報が必要なのかを伝えない。
  • 5-2-3根拠資料には、学生の機能障害の程度が推測できる内容が含まれることを理解している。

    [意図]

    学生の機能障害と社会的障壁が学修活動をどの程度制限しているかによって、合理的配慮の内容が決定される。そのため、支援者は機能障害の程度、状態に関する情報が必要であることを学生にも伝え、それを含む根拠資料が得られるよう、学生を支援することが求められる。

    よくある間違い

    • その障害によって具体的にどのような場面でどれくらい日常生活が阻害されるかが分からないにもかかわらず、診断名だけが書いてある診断書で配慮を決定する。
  • 5-2-4機能障害のある学生がどこまでできるのか、何ができるのかについて専門家の所見が必要な場合、それが根拠書類に含まれるよう、学生に働きかけることができる。

    [意図]

    根拠資料は学生の困難さを説明するものであるため、学生の「できない」側面の記載があれば十分であると考えがちである。しかし、合理的配慮の内容を検討する際には、どの程度ならできるのか、どのような条件下なら機能障害があっても学修が可能なのかといった情報が必要となる場合もある。また、安全面の理由から、修学を一部制限する必要がある場合もある。ただし、外部の専門家は学生の大学での学修状況やニーズを把握していないことが多く、その判断が困難である。そのため、学生が大学で求められている内容について自ら専門家に説明・相談し、それらの情報が得られるよう学生を支援する。

    専門家からの情報を得るのが困難な場合は、支援者が構造的な聞き取りを行うことで、それらを明確にすることも検討する。

    よくある間違い

    • 根拠資料を得るのは学生の責任なので、どのような情報が必要かといった説明をせずに、学生に根拠資料を準備させる。
  • 5-2-5機能障害の記述に関して、客観性・専門性の高い資料とは具体的にどのようなものを指すのかを理解している。

    [意図]

    機能障害の客観性の高い根拠資料の例として、具体的には障害者手帳の種別・等級・区分認定,適切な医学的診断基準に基づいた診断書,標準化された心理検査等の結果,学内外の専門家の所見などがあげられる。専門家の所見として、機能障害の評価に関して専門的な訓練を受けた支援者が、構造化された聞き取りや観察、学生の遂行した課題を客観的に分析し、一般学生と客観的に比較した上での判断なども含まれる。

    よくある間違い

    • 根拠資料として、医師の診断書しか認めない。
    • 支援に携わった経験があるということのみによって、支援者が自身の客観性・専門性が担保されたと考える。
  • 5-2-6根拠資料には学生の機能障害についての専門的・客観的記述が含まれなければならないことを理解している。

    [意図]

    学生の語る困難さや、支援者の印象や見立ては配慮を検討する上で不可欠である。しかし、それらは客観性が担保されにくく、支援者の主観的判断が学生の実際の状態を正しく表しているとは限らない。なぜならそうした判断は、学生が自身について語る力に左右されるからである。また、機能障害の程度ではなく支援者の裁量によって配慮の内容が決定されるべきではない。医学的な検査や標準化された心理検査など、客観的な情報を加えることで、より適切な判断ができる可能性が高まる場合も多い。学生にとってより効果的な支援を受ける機会を奪うことがないよう、必要に応じて、学生にもそういった検査を受けることの重要性を説明できるようにする。

    よくある間違い

    • 学生の語りのみに依存し、現在の困難を裏付ける情報を得ずに合理的配慮の内容を決定する。
    • 検査の結果よりも支援者の主観的な印象に基づいて合理的配慮の内容を決定する。
  • 5-2-7学生の求める配慮の内容や機能障害の内容によって、根拠資料に含まれるべき情報のレベルが異なることを理解している。

    [意図]

    機能障害によっては、特別な検査結果等がなくても機能障害の状況を現認できる場合もある。そのような状況では、あらためてなんらかの検査結果を求める必要はない。また、同じ機能障害でも学生の訴える困難さや求める配慮によっては、機能障害の程度まで考慮する必要がない場合もある(例えば簡易な支援機材の貸し出しや、座席の指定、あるいはユニバーサルな配慮など)。そのような場合には、その機能障害の有無が判断できるならば、それ以上の資料の提出を求める必要はない。支援者は、状況に応じて必要な根拠資料のレベルについての判断ができるようになることが求められる。

    よくある間違い

    • 機能障害の状況が明確に原因できるにもかかわらず、詳細な検査結果を含む根拠資料を求める。
    • 求める合理的配慮の内容にかかわらず、詳細な検査結果を含む根拠資料を必須とする。
    • 書類に不備があったので、適切な書類が揃うまで座席の指定や支援機器の使用なども許可しなかった。
  • 5-2-8根拠資料の発行日を確認し、必要に応じてアップデートを求めている。

    [意図]

    機能障害の中には状態が固定、あるいは変化が非常に緩やかなものもあるが、進行性のものや治療によって改善が見込めるものもある。また、機能障害によっては修学上の困難が環境依存的で、それまでの学修環境では困難を感じていなくても、状況が変わって新たに困難を感じることや、その逆もあり得る。したがって、根拠資料の発行年月日を確認し、状況に応じて最新のものを求める必要が生じる場合がある。過去の根拠資料に基づいて同じ配慮内容を精査せずに継続する、または新たな合理的配慮を認めないといった対応は不適切である。

    よくある間違い

    • 根拠資料の内容が古く、記載内容と現在の様子が異なっているにもかかわらず、古い根拠資料に基づいた合理的配慮を提供し続ける。
    • 機能障害の状況が変化しているにもかかわらず、合理的配慮の内容を変更しない(もしくは、必要な追加の合理的配慮を認めない)。
  • 5-2-9客観性の高い根拠資料かどうかの判断として、誰が発行した書類かを確認している。

    [意図]

    客観性の高い根拠資料は、その検査や診断に対して信頼のおける臨床的判断ができる者が作成した資料であることが求められる。つまり、有資格者や専門のトレーニングを受けた者が作成する必要がある。また、精神障害や発達障害など状態像の把握に継続的なかかわりが必要になるような障害の場合は、いつからその学生を診ているかなども重要である。そのため、学外の専門機関から得られた根拠資料の作成者の資格や立場などを確認する。

    よくある間違い

    • 学生の状況を正しく評価できる専門資格を持たない者によって作成された根拠資料を判断に用いる。
    • 学生の状況を的確に判断するのに必要な関係性がないと思われる専門家によって作成されたと思われる根拠資料を判断に用いる。
  • 5-2-10過去の支援状況に関する資料が根拠資料として利用可能であるか、その都度検討している。

    [意図]

    過去に受けた合理的配慮は現在の機能障害の客観性を担保するものではない。そのため機械的に過去と同じ内容を適用するのは適切でない場合がある。しかし、機能障害の状況に大きな変化がなく、合理的配慮を必要とする場面や求める内容も過去と同様であるなら、新規に根拠資料を求めなくてもよいと考えられる。

よくある間違い

  • 共通テストで1.3倍の試験時間延長が認められていたので、その後のすべての試験を1.3倍の試験時間で実施する(試験の形態が異なれば、必要な時間は異なる)。

5-3 根拠資料の運用

根拠資料の運用を考える際に,大学としての情報公開に関すること,柔軟な運用に関すること,根拠資料を得るための体制,支援者に求められるコンピテンシーについて理解していることが求められる。

5-3-1根拠資料の取り扱い

  • 5-3-1-1学生が必要な根拠資料を事前に準備できるように、情報を発信している。

    [意図]

    学生の機能障害や求める合理的配慮の内容によってどのような根拠資料が必要か、誰でも情報が得られるようになっている。これらは、合理的配慮に関する規程や具体的手続き、相談窓口などの情報とともに公開することが期待される。

  • 5-3-1-2根拠資料の情報を提供できる対象を事前に定め、学生が同意している。

    [意図]

    根拠資料には、障害の程度などの要配慮個人情報を含んでおり、慎重に扱う必要がある。合理的配慮の実施に関わる授業や学部の教職員にどのような情報まで提供できるかという原則を定めるとともに、守秘義務を遵守するための同意書などが必要となる。

  • 5-3-1-3根拠資料の保管方法が予め定められており公開されている。

    [意図]

    根拠資料には要配慮個人情報が含まれているため、媒体毎の保存場所や保存期間、機密性・完全性・可用性のレベルが予め定められていることが求められる。管理のルールは全ての学生に公開されている必要がある。

よくある間違い

  • 合理的配慮を申請する学生にだけ関連規則を知ってもらえれば良い。
  • 大学で合理的配慮を受けるために必要な手続きを公開していなかったために、すぐに希望通りの配慮が受けられると誤解を与えてしまう。
  • 必要な手続きを公開してはいるが、その情報に簡単にアクセスすることが出来ない。
  • 必要な根拠資料は個々の事情によって異なるので、申請があった時点で当事者と相談して取り扱いを決めるのが良い。
  • 学生の許可なく、診断名を授業担当者に伝えてしまう。
  • 根拠資料は大学の判断で共有の範囲を決めて良く、廃棄は関わった者の判断に委ねられる。

5-3-2根拠資料の収集の支援

  • 5-3-2-1どのような外部機関にどのような根拠資料を依頼できるかを理解している。それに基づいて学生を専門機関やリソースへリファーできる。

    [意図]

    機能障害の状態を示すための検査を学内で実施できない場合、学外のどのような専門機関でその検査を受けることができるか、学生に情報提供できるようにする。大学として、検査を実施できる有資格者と契約し、必要に応じて学生が検査等を受けられるようにすることも有効である。また、根拠資料に合理的配慮の検討に必要な情報が含まれていない場合、それを得るための専門機関リストやどの機関を利用するか相談できる人材を確保しておくことが考えられる。

  • 5-3-2-2可能であれば学内で根拠資料が得られるよう、学内の体制を整える。

    [意図]

    合理的配慮を必要とする学生が根拠資料となり得る資料を持っていない場合、新たにそれらを得るには時間がかかる場合が多い。学内教職員の有資格者など、学内で根拠資料が得られるような体制を整えることは有効である。

よくある間違い

  • 医療機関を受診するように助言するが、具体的な受診先について選択肢を紹介提示することができない。
  • 学生は事前に準備をしていたものの、医療機関で根拠書類を獲得するのに長い時間を要し、必要な時に支援が受けられない。
  • 学生の負担を考えて、個人的に便宜を図り検査を行う。
  • 検査を実施可能な有資格者がいるにも関わらず、すべての検査を学外で実施するよう求める。
  • 根拠資料に心理検査が必要と助言されたが、学内で実施出来ないのは大学の事情なのだからコストは大学が負担する

5-3-3必要書類に関する柔軟な対応

  • 5-3-3-1合理的配慮の内容、必要な変更の度合い、授業担当者の負担などにより柔軟に根拠書資料を求めている。

    [意図]

    合理的配慮の提供にあたり、詳細な検査結果等を含む根拠資料が常に必要となるわけではない。たとえば、授業担当者に負担とならず、他の受講者への影響もないような合理的配慮であれば、簡易な根拠資料(学内の専門家の所見等)で十分との判断もある。また、合理的配慮という枠組みではなく、授業担当者の裁量で教育的に対応するという選択肢も考慮する。

  • 5-3-3-2最新の根拠資料の提出が困難な場合、学生の学修に影響が出ないよう、柔軟に対応することができる。

    [意図]

    機能障害があることが明らかであるが、時間がかかるなどの理由で、最新の根拠資料の提出が困難な場合、学修に影響が出ないよう可能なかぎり柔軟に支援の提供、環境調整を行う。根拠資料の準備ができたら、その内容もふまえて支援内容を再検討する。

    例)過去の支援状況に関する資料を参考にする。状態像の変化が少ない障害の場合、過去の根拠資料を利用する。読み・書きなど実際にしてもらい、困難の程度を確認する。

よくある間違い

  • 必要な書類が全て準備出来ないことを理由に、大学が合理的配慮の申請自体を拒む。
  • 場合によって求められる根拠資料が異なるにもかかわらず、どのような根拠資料が必要なのかを学生に説明できない。
  • どのような根拠資料が必要か(あるいは不要か)を理解せずに画一的に資料の提出を求める。
  • 根拠資料取得のための学生の経済的・時間的負担を考慮せず、念のためという理由で必要のない根拠資料の提出も求める。

5-3-4根拠資料にもとづく判断

  • 5-3-4-1学生の障害・特性を詳細かつ客観的に理解し、必要な配慮内容を決定するために、根拠資料を適切に活用することができる。

    [意図]

    根拠資料の内容がそのまま配慮内容へと翻訳されるのではなく、記載内容を解釈、検討することが必要である。

  • 5-3-4-2根拠資料にもとづいて判断をする際、資料(診断や検査結果)の内容に関する専門知識のある人材が関与することが望ましい。

    [意図]

    委員会等判断を行う組織において、専門家からの根拠資料を読み取り、配慮へと翻訳していく専門的な能力がある人材をメンバーに含むことが望ましい。学内に専門知識を持った専任の教職員がいない場合は、必要に応じて協力が得られる学外の専門家に依頼する。

  • 5-3-4-3客観的な判断ができるよう、複数人で根拠資料の解釈や整合性の点検をしたり、後で別の人がチェックしたりする体制を構築することが望ましい。必要性に応じて、追加情報を請求することも考えられる。

    [意図]

    特定の個人に判断を任せるのではなく、組織としての決定ができるよう、学内の体制を整える。

よくある間違い

  • 学生の語りのみから機能障害を理解しようとした結果、学生自身が認識できていなかった問題の本質を見逃し、効果的な支援ができない。
  • 根拠資料に客観的な検査データが複数含まれていたので、根拠資料作成者(例えば医師や心理士)の提案を吟味することなく採用した。
  • 権威のある支援者であれば複数人の判断に匹敵すると考えて、組織体制によるチェックを省略した。

5-3-5合理的配慮の構成を判断した後

  • 5-3-5-1判断内容を学内の教員に説明する際、支援学生の了承を得た上で、分かりやすく説明することができる。

    [意図]

    判断内容の説明にあたっては、根拠資料の記載内容もふまえ、なぜその配慮が妥当なのかを説明できるようにする。

  • 5-3-5-2根拠資料は合理的配慮の必要性を判断するものなので、配慮内容に関する大学の判断が学生の希望と異なる場合もあり得る。その際に、理由について学生に明確に説明するとともに、提供可能な異なる配慮について対話を重ねつつ、検討することができる。

    [意図]

    なぜ、学生の希望通りの配慮を提供できないのか(機能障害があることが確認できないから、求める配慮と機能障害の論理的説明がつかないから、過重な負担であるから、教育の目的や評価基準に関わるから等)、明確に説明できるようにする。また、希望通りにできないということで終わるのでなく、学生のニーズをふまえながら考えられる代替案について、対話を重ね検討する。

  • 5-3-5-3提供された合理的配慮が適切であったかどうかをモニタリングする

    [意図]

    根拠資料に基づいて配慮の内容を決定すれば終わりということではなく、配慮を提供することで学修にどのように変化したか、確認する。必要があれば、学期の途中でも新たな配慮を検討する。

よくある間違い

  • 合理的配慮の判断は障害支援や学生支援の専門家がするものだから、教員には結果だけ伝えれば良い。
  • 学生が希望した配慮が認められない場合に、その理由を説明できずに紛争となる。
  • 合理的配慮の決定は時間とエネルギーがかかるものなので、いかなる理由があっても一度合意されたものは変更しない。

5-3-6発展的な支援

  • 5-3-6-1根拠資料や合理的配慮にこだわらず、学生にとって必要な支援について学生とともに考え、提案することができる。

    [意図]

    機能障害がある学生であっても、合理的配慮が必須ということではないし、学生が合理的配慮を望まない場合もある。根拠資料や合理的配慮にこだわらず、学内で利用可能な学生支援の情報や関連の学外機関の情報も共有しながら、大学生活をより良いものにするための方法を学生とともに考えることが重要である。

  • 5-3-6-2根拠資料に記載される可能性のある内容について、常に最新の情報を学んでいる。

    [意図]

    診断名や診断基準、検査などは定期的に新しいものに更新されている。また、初等中等教育における教育関連の制度や、入試における手続きなども新しくなることがある。研修会や文献資料等を通して、これらの最新情報を常に得られるようにすることが求められる。

よくある間違い

  • 障害がある学生に合理的配慮を行えば当該学生への差別が回避されるので、それ以上の働きかけや配慮は他学生への逆差別になるので行わない。
  • 合理的配慮は当事者本人の申請が手続きの根拠になるので、本人がアクションを起こさない限り大学側からの情報提供など手を差し伸べることは一切避ける。
  • まだ評価の定まっていない疾患や機能障害は、学生生活に支障があっても根拠として認めない。

関連資料